スバルのスポーツモデルといえばおそらく1番はじめに出てくるであろう名が「WRX」ではないでしょうか。スバルの代名詞ともいえるスポーツモデルWRXがどのように誕生したのか、どのような歴史を辿ってきたのか、スポーツセダンの世代、スポーツハッチバックの世代、インプレッサからの独立、最新モデルの情報までたっぷりとお届けします。
スバルWRXの遍歴を見てみよう
スバルのスポーツモデルWRXはもともと世界ラリー選手権(WRC)参戦車両として高性能なスペックを与えられたモデルに付けられた名前です。インプレッサWRXでラリーに参戦するまではレガシィRSでラリーに参戦していました。レガシィRSに変わってラリーに参戦したインプレッサWRXはラリーで輝かしい成績を残すと共にラリーカーのベースモデルとしてスバルのハイパフォーマンスカーとしての確固たる地位を築き上げました。現在でもスバルWRXシリーズは人気が高く日本のクルマ好きやスバリストを魅了しています。
さらに海外でも耐久性の高さやMade In Japanの信頼性、卓越した走りにより高い人気を誇っています。スバルは現在ラリーに参戦はしていませんが、高性能モデルの象徴としてWRXの名を冠したモデルを製造販売し続けています。ちなみにスバルWRXは世界ラリー選手権からニュルブルクリンク24時間耐久選手権などのロードカーレースへ戦いの場を移し現在も世界の強豪たちと熱い戦いを繰り広げています。ここからはスバルが誇る世界的スポーツモデルスバルWRXの遍歴を詳しく辿っていきましょう。
〈初代WRX〉
初代WRXは1992年から製造販売が開始されたコンパクトカーインプレッサに設定されました。スポーツワゴンとセダンとクーペをラインナップしていた初代インプレッサ。ボディサイズは全長4,340mm全幅1,690mm全高1,405mmと非常にコンパクトなサイズ。このパッケージに搭載されたエンジンはレガシィRSにも搭載されていた2.0L EJ20型 水平対向DOHC 4気筒ターボエンジン(最高出力240PS最大トルク31.0kgm)です。コンパクトなボディにハイパフォーマンスなエンジンを搭載しエンジンが生み出すパワーを受け止めるためのブレーキやサスペンションなど専用装備が与えられた初代インプレッサWRX。
インプレッサの最上級ハイパフォーマンスグレードであるインプレッサWRXがスバルWRXシリーズのスタートとなりました。年次改良によるエンジンのブラッシュアップ、WRX STIのリリース、特別仕様車、台数限定車など数多くのバリエーションを展開し販売しながら2000年まで製造販売された初代インプレッサWRX。1992年から2000年の8年に渡りスバルWRXシリーズの基礎を作り上げてきた初代インプレッサWRXは2000年にフルモデルチェンジをして2代目へ移行します。
〈2代目WRX〉
2代目インプレッサは2000年から2007年まで製造販売されました。2代目インプレッサはインプレッサ迷走期ともいえる世代で、デザインの変更だけでも「丸目」「涙目」「鷹目」の3種類もあるのです。そんな2代目インプレッサにも製造販売開始当初からWRXシリーズがラインナップされました。4ドアセダンにラインナップされたインプレッサWRXは全長4,415mm全幅1,740mm全高1,425mmとスポーツ走行時の安定性を高めるために全幅を広げ3ナンバー化しています。搭載されるエンジンは2.0L水平対向4気筒ターボエンジン(EJ20型)が引き続き使用されていますがパワーアップ(最高出力250PS最大トルク34.0kgm)をしています。
駆動方式は四輪駆動を採用しており安定した速い走りが特徴です。衝突安全性を高め耐久性の高いボディを手に入れた2代目インプレッサWRXは一部の警察車両として配備されたこともある実力の持ち主です。マイナーチェンジや改良によりデザインの変更やコンプリートカーをリリースし続けた2代目インプレッサWRXは2007年まで生産され3代目へフルモデルチェンジします。
参考:スバルの買取専門ページです
〈3代目WRX〉
2007年にフルモデルチェンジを受けた3代目インプレッサは従来のインプレッサから大幅に路線を変更し5ドアハッチバックがベースとなりました。インプレッサWRXもベースモデル同様に5ドアハッチバックとなり3代目インプレッサWRXの製造販売が開始されました。ボディは新開発の「SI-シャシー」となりリアサスペンションがダブルウィッシュボーン式サスペンションに変更。踏ん張り感を強調するオーバーフェンダーが採用されたボディは全長4,415mm全幅1,795mm全高1,475mmとなりエンジンは2.0L水平対向4気筒ターボ(最高出力308PS最大トルク43.0kgm)と2.5L水平対向4気筒ターボ(最高出力300PS最大トルク35.7kgm)の2種類をラインナップ。
どちらのエンジンでもCセグメントサイズの5ドアハッチバックを動かすのにはオーバースペックといえるほどパワフルなエンジンを搭載しています。駆動方式はAWD(四輪駆動)を引き続き採用。この3代目インプレッサWRXから280PSの自主規制が撤廃され大台の300PS超えを果たしています。そして2010年、4ドアセダンのWRXを追加すると同時に大きな変化が訪れます。それは「スバルインプレッサWRX」から「スバルWRX」へ車種名の変更。車種名は変更されたものの2014年まで3代目WRXが継続販売されました。
〈4代目WRX〉
「スバルインプレッサWRX」から「スバルWRX」となってはじめてのフルモデルチェンジが行われたのは2014年。初代WRXから3代目WRXの途中までは「スバルインプレッサ」の高性能スポーツバージョンとしてのラインナップだったWRXが1つのモデルとして扱われるようになったことでスポーツモデルとしてのポジションをより明確にしました。また設計や開発でもWRXが目指す安全で愉しく速いクルマを実現することができたのです。ボディは全長4,595mm全幅1,795mm全高1,475mmの4ドアセダンのみでインプレッサをベースとしていた従来のWRXからWRX専用ボディ構造を採用することができたのはインプレッサからの独立があったからこそといえるでしょう。具体的にはボディパネルを厚板化やボディの補強によってねじり剛性40%以上、曲げ剛性30%以上向上しています。搭載されるエンジンは水平対向4気筒ツインクロスターボエンジンを搭載。最高出力300PS最大トルク40.8kgmを発生させるパワーユニットへ進化しています。
特に低回転域でのトルク増加は日常での扱いやすさやスタートダッシュにも重要な要素です。分厚いトルクを路面に伝えるメカニズムはシンメトリカルAWD(四輪駆動)と呼ばれるシステムでトルク配分型四輪駆動システムを採用しています。これによりエンジンパワーを余すことなく路面へ的確に伝え安定感がある走行を実現しています。もちろんブレーキやサスペンションもWRX専用となっているためスポーツドライビングと日常での乗り心地の良さを高次元でバランスさせているのはスバルWRXならではのポイント。この4代目WRXをベースとしたレーシングカーは最も過酷なサーキットとして名高いドイツ ニュルブルクリンクにあるサーキットで行われるニュルブルクリンク24時間レースへ参戦しています。これほどにまでパフォーマンスに優れポテンシャルが高いモデルであってもスバルが誇る安全技術アイサイトを搭載しているところはスバルらしいところですね。
WRXの魅力を解説
スバルの代名詞でもありスポーツモデルの象徴であるスバルWRX。初代から現在に至るまでこれほどにまでクルマ好きを魅了しスバリストを虜にしているスバルWRXの魅力は、比較的コンパクトなボディサイズによる扱いやすさと運転のしやすさを維持しつつも日常での使い勝手やユーティリティを犠牲にしていないパッケージングや乗り心地、世界的に見ても珍しいハイパフォーマンスな水平対向エンジン(水平対向エンジンを量産しているのはスバルとポルシェだけ)を搭載しAWD(四輪駆動)を組み合わせているドライブトレイン、高い剛性と衝突時の安全性を持つプラットフォーム、スバルが目指す安全で愉しいクルマを具現化した安全技術アイサイトの搭載などスバルらしい要素のすべてが注ぎ込まれているところがスバルWRXの魅力でありWRXの価値といえるでしょう。
参考:スバルの買取専門ページです
国産水平対向スポーツでおすすめのシリーズ!
スバルのレース魂やスバルのクルマ作り「安全と愉しさ」を体感できるスバルWRXシリーズ。1992年から現在(2019年3月時点)まででも四半世紀以上の期間にわたり販売され世界中から注目され続けているモデルです。多くのバリエーションが出回っているスバルWRXシリーズの中でのオススメはズバリ「スバルWRX STI」(4代目)です。4代目スバルWRX STIは2.0L水平対向4気筒ツインクロスターボエンジン(最高出力308PS最大トルク43.0kgm)を搭載しトルク配分型シンメトリカルAWD(四輪駆動)システムを6速のマニュアルトランスミッションで楽しむことができるホットなモデル。この4代目をオススメする理由はインプレッサから独立しWRXとなったはじめてのモデルであり専用構造や専用設計、専用チューニングや専用セッティングが施されているモデルだからです。新車本体価格は4,060,800円と国産コンパクトセダンとして考えれば非常に高価です。一方、中古車市場では2,600,000円~流通しています。スバルWRX STIはドイツ ニュルブルクリンク北コースでのタイムアタック(タイムアタックモデル:スバルWRX STI type RA NBR spacial)を行った結果6分57.5秒を記録し7分切りを達成しました。このタイムがどれほど速いのかというとポルシェが販売していたプラグインハイブリッドスポーツカー「918スパイダー」の記録(2013年タイムアタックの記録6分57秒)と同等のタイムなのです。これほど高いポテンシャルを秘めたモデルを新車本体価格で約400万円、中古車では約260万円から手に入れられると考えればコストパフォーマンスが高いモデルと言えるのでないでしょうか。
WRXの歴史は続いていく
スバルを代表するスポーツモデルWRX。ラリー参戦車両のベースモデルとしてデビューしたインプレッサWRXからスタートしたWRXシリーズの歴史。初代から3代目まではインプレッサの派生車種としてインプレッサ高性能スポーツバージョンのポジションを勤め、4代目からはWRXというひとつの車種としてスバルスポーツモデルの象徴へと昇格しました。世界に通用するコンパクトスポーツモデルスバルWRX。これからも世界で戦える高性能コンパクトスポーツモデルとして、そして、スバルを代表するスポーツモデルのイメージリーダーとして君臨し続けることでしょう。
[ライター/齊藤 優太]