コラム

覆面パトカーだらけのスズキ・キザシってどんな車?

覆面パトカーと言えば交通隊のクラウンを想像する方が多いと思いますが、刑事が乗る捜査用の車両も存在することをご存じでしょうか。その中でも異彩を放っている車両がスズキ「キザシ」です。特筆することは自家用車としての販売台数の少なさです。キザシを見かけたらほぼ捜査用覆面パトカーと思って良いです。この記事では、そんなキザシについて詳しく紹介します。

スズキ「キザシ」とは


出典:Ypy31, CC0, ウィキメディア・コモンズ経由で

スズキ「キザシ」は2009年に発売されました。知っている方はなかなかの車好きと見られます。2015年の販売終了までに日本国内で登録されたキザシは全部で3400台弱、これは売れている車の1ヶ月分にも届きませんので、かなりのレア車です。これでも十分にレア車なのですが、なんとそのうちの少なくとも908台、一説によると1320台が覆面パトカーだとされています。登録台数の四分の一以上が覆面パトカーになっているという車は、後にも先にもキザシだけではないでしょうか。
キザシのコンセプトカーがモーターショーに登場したのは2007年、当初はクロスオーバーSUV的なフォルムを持ったモデルでした。キザシ2、キザシ3と進化し最終的にセダンボディが与えられます。最大3600ccのエンジンや6ATの搭載、1900mmを超える全幅など、コンセプトモデルらしい誇張はあるにせよ、世界戦略のフラッグシップとして従来のスズキのイメージを覆す挑戦的なモデルが多くの人の期待と注目を集めます。

しかし実際に発売された際はエスクードの2400cc直列4気筒エンジンを改良したものが搭載され、CVTに落ち着いたミッションと合わせ、必要十分ではあるものの少々インパクトに欠けるパワートレーンとなりました。エスクードも過去にはV6エンジンを搭載しており、「フラッグシップ」であるキザシが直列4気筒のみというのは寂しい気もします。これには2009年という発売時期も関係しています。もう10年以上が経ち忘れ去られつつありますが、2008年のリーマンショックは世界中の産業に大打撃を与えました。当時スズキと提携していた米ゼネラルモーターズも2009年に一時倒産することとなります。キザシは相当に北米を意識して作られた車であり、将来的にはGMと共同開発したHVを搭載する計画もあったようですが、リーマンショックによって全てご破算となってしまいました。
その結果、全長4650×全幅1820×全高1480mmという堂々たるDセグメントボディには少々物足りなさを感じる2400ccエンジンが搭載された1グレードのみでの発売となりました。このボディサイズは当時のBMW3シリーズよりも大きいほどで、実車を見ると意外な大きさに驚きます。タイヤも235/45R18という立派なサイズ。外径で言えば同年式のクラウンよりも大きく、同じく覆面パトカーによく利用されるマークXの上級グレードと同じサイズです。もっとも、キザシの場合はスポーツモデルではないためブレーキローター径は小さく、16インチまでのインチダウンも可能なようです。エンジンは188psというまずまずの出力を発揮しますが、CVTとの組み合わせによりフィーリングは今一つという意見が多いようです。マニュアルモードを活用することである程度は改善するかもしれません。中には海外仕様に存在する「6MT」モデルを並行輸入している猛者もいるとか。ここまで行くと日本に数台というレベルでしょう。

キザシが覆面パトカーに採用された理由

キザシの覆面パトカーは「少なくとも908台」と書きましたが、なぜこれほど多くの覆面キザシが誕生したのでしょうか。実際のところ、その正確な理由は分かりません。販売不振によって発生した在庫の活用という見方が多いでしょうが、それも推測に過ぎません。ある雑誌調査によると覆面キザシ納入時の台単価は市販車の半額以下だとか。だとすれば大変お得ですね。
しかし覆面パトカーは「目立たない」ことが要求される車両です。その点では希少車のキザシはあまり向いているとは言えません。案の定、「キザシを見たら覆面と思え」などと言われてしまう状況に。目立つので現場からは不評という話も聞かれます。そうなってしまうのは販売状況を見れば予想できることですが……警察側は価格だけで導入を決めたのでしょうか。とはいえ、キザシの覆面車両が導入されたのは2013~2014の二年間と言われています。もう7年以上が経過しているため、今後は新車両への置き換えも徐々に進んでいくと思われます。覆面キザシを見られるのもあと数年かもしれません。
ちなみに「908台」という具体的な数字がどこから出ているのかと言うと、「リコール」の該当台数です。車両に重大な不具合があった際に無償修理を行うリコール制度ですが、キザシの場合なんと「サイレン」の不具合でリコールを行っています。リコール対象は2013年2月までの製造車両となっているため、もしかするとリコール対象外の覆面キザシも相当数存在しているかもしれません。

キザシはどこで購入できる?

新車販売は終了しているため、欲しい方は中古車を探すことになります。現在、インターネットの中古車検索でヒットする「キザシ」は20台ほど。買いたい!という方は見逃さないようにしましょう。1グレードのみ、ボディカラーも白黒シルバーの三色だけというシンプルな構成のため、あまり迷うポイントは無さそうです。強いて言えば2WD/4WDが設定されていますが、スズキのi-AWDは比較的実用四駆の性格が強いパートタイム4WDです。積雪地以外では積極的に選ぶ理由は薄いかもしれません。モデル後半で追加された運転支援装備のオプションも2WD車のみの設定です。

まとめ

スズキの世界戦略フラッグシップとして企画された「キザシ」。当時の世界情勢もあり、本来の計画とは異なる戦略を取らざるを得なくなった面もあるかと思います。アルミ部品を多用したエンジンや足回り、細部の作り込みにこだわったインパネ周りなど、丁寧に作られた車であることは間違いありません。アメリカの最高速チャレンジ「ボンネビル・スピードウェイ」ではターボ架装された米スズキのキザシが328km/hを記録するなど、意外性もあります。パーツの少なさが難点ですが、カスタマイズベースにすれば目立つこと間違いなし。台数の少なさから今後ますます探しにくくなるでしょうから、乗るなら今がチャンスかもしれません。カーシェアやレンタカーでも数件ヒットするので、まずはその辺りで体験してみても良いかと思います。

 

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ユーズトカーラボ 編集部
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