コラム

盗まれやすいランドクルーザー。その手口と対策は?

300系の登場で話題のランドクルーザー。悪路走破性能の高さとタフさから日本国内はもちろん、世界中で大人気の車種となっています。10年落ち、走行距離10万kmを超えても大きく中古車価格が下がることはありません。そんなランドクルーザーですが、気をつけたいのが盗難被害です。日本国内で最も盗難リスクの高い車種の一つとなっています。盗まれないためにはどうしたら良いの?この記事では、大切なランクルを盗難被害対策法を紹介します。

ランドクルーザーの盗難被害

今年発売された新型の納車が「3年待ち」とも言われる、大人気のランドクルーザー。嬉しくないことに、自動車窃盗団からも人気です。損保会社が公表している盗難車種データでは必ず上位にランクインし、車両保険のリスク区分も最高ランクが定位置です。「盗まれやすい」という情報は多くのユーザーが知っており対策もしているはずなのに、どうしてこれほど盗難被害が相次ぐのでしょうか。そうです。売れるからです。
海外の武装組織がランドクルーザーに乗っている映像を見たことがある方は多いでしょう。過酷な環境下で真価を発揮するこの車は、「どのような形であっても」市場まで運べば買い手が付きます。日本国内のような車両登録制度が無い国や、そもそも政府が機能していないような国は格好の売り先です。日本の税関を「部品扱い」で抜けるために、真っ二つに切断されるケースも少なくないようです。切断された車両はパキスタンやドバイの巨大な中古車市場で「復元」され、世界中にデリバリーされることになります。確実に売れるランドクルーザーは、ブローカーにとっては1台当たり数百万の利益が確定しているわけで、リスクを押してでも集める意味があるということです。

ランクルの盗難方法

窃盗のやり方を詳しく解説することは憚られますが、自衛のために知っておくべきことをお伝えすることも必要です。最も重要なことは、「窃盗側が本気になったら盗難を防ぐ手段はほぼ無い」という点です。筆者の知る中で最も強引な手口は「クレーンでつり上げそのまま積載して運ぶ」というものでした。こうなればどうしようもありません。警報が鳴ろうが始動不可だろうが関係なく運ばれてしまいます。これは極端な例ですが、どれだけ高価な盗難防止装置を装着していたとしても、何らかの方法で無力化される可能性があるということは覚えておきましょう。

近年の自動車窃盗で頻繁に使用される手口に「リレーアタック」と呼ばれるものがあります。現在販売されている乗用車にはほぼ「イモビライザー」という盗難防止機能が装備されています。もちろんランクルにも装備されています。これは車の鍵に割り当てられた電子キーが認証されなければエンジンを始動できないという仕組みです。有効に思える機能ですが、既に複数の手段で無効化されています。一つが「イモビカッター」と呼ばれる機器の接続による方法。本来は修理業者などが用いる機器ですが、解除手段があれば当然窃盗団に利用されます。数世代にわたってイモビ側の進化と解除機器の進化というイタチごっこを繰り返していましたが、近年では更に簡単な方法が主流になっており、それが「リレーアタック」と呼ばれる手口です。仕組みは非常に単純で、「スマートキーの電波を増幅する」、たったそれだけです。
スマートキーは常に微弱な電波を発信していて、それを車両側が感知することで鍵を取り出さなくてもロックの解除やエンジンの始動ができます。つまり「電波さえ届けばロック解除もエンジン始動も問題なくできてしまう」わけです。本来ならば車両近辺1.5m程度の範囲でしか受信できない微弱な電波ですが、これを中継器によって増幅しリレーすることで、家の中に鍵があるという状態でも車に「近くに鍵がある」と誤認させるのがリレーアタックの手口です。こうして盗難された車両はスマートキーを交換され、海外などへと運ばれていくことになります。
手口としてはとても単純で、実はこれを防ぐ手段も難しくありません。電波を外に出さなければ良いのです。家の中では鍵を金属製の箱にしまう、電波遮断ケースを利用する、玄関の近くには鍵を置かない等の比較的簡単な方法で防ぐことができます。

ところが、窃盗する側の技術も日進月歩。現在では「電波自体からキー情報をコピーする」という「コードグラバー」なる手口が流行しているようです。これはスマートキーのスペアを作成する機器を悪用した方法で、目的のキーの電波からコードグラバーによってスペアキーを作られてしまうと、あたかも本来の所有者かのように車を奪われてしまいます。作られたスペアキーは本来のスマートキーと同一扱いになるため、スマートキーと連動するタイプのセキュリティーシステムも同時に無効化されてしまう点が厄介です。対策は難しく、今後被害が増えることが懸念されています。

危険な手口はまだあります。現在のところ最新と言われているものが「CANインベーダー」と呼ばれる手法です。これは「CAN」という自動車の車内ネットワークに機器を直接接続して車両コンピューターを誤認させるというもので、セキュリティーシステムを含め車内ネットワークに接続されているあらゆる機能を無効化できると言われています。CANは世界中の自動車で使用されている統一規格のため、あらゆる車が同じ手法で被害に遭う可能性があり、現在のところ完全に防ぐ手段は無いとされています。海外で広まりつつある手口ですが、今年に入って日本国内でもCANインベーダーを使用した窃盗事件が摘発されました。報道によると被害額はおよそ10億円に上ると見られ、200台近い自動車が盗難被害に遭ったとされています。被害単価は単純計算で500万になるため、ランドクルーザーなどの高級車が集中的に狙われたと考えられます。
ところで、近年ではBluetoothや車内wi-fiを搭載した車も現れ、更には車自体をネット接続機器と捉えた「コネクテッドカー」の概念も広まりつつあります。「脆弱性を持つ統一規格」と「ネット接続」が合わさると……。近い将来、遠隔からの自動車ハッキングというSF的な事件も発生するかもしれません。

おすすめのランクル盗難対策

前述した通り、残念ながら車両盗難を完全に防ぐ方法はありません。「様々な方法を複合的に用いて窃盗側のリスクを最大化する」というのが今のところ目指すべき盗難対策と言えるでしょう。「同じ車種なら簡単に盗める方を選ぶ」という前提で、できるだけ簡単に盗めないようにすることです。
まず、ランクルユーザーも多くの方が設置している社外セキュリティーシステム。特に80シリーズなど2000年以前の車両には純正イモビライザーが装備されていないこともあり、これらのセキュリティーシステムは是非とも装着しておきたいところです。完全とはいかなくとも、正しく装着し、正しく運用すれば相当の盗難防止効果を期待できます。しかし、現実には警報の誤作動や出発時の煩わしさから機能をオフにしている方も多いようです。5万円~数十万円程度と決して安くない装備ですので、せっかく装着しているのならば正しく運用するべきでしょう。窃盗手口の解説でも書いたように、高級セキュリティーシステムであっても決して万能ではありません。設置したからと油断せず、警報装置のセンサー感度を調整するなど、正しく運用できる状態を維持することも重要です。
次に、ハンドルロックやタイヤロックのような物理的手段。これも抑止効果を高めることはできますが、単体ではそれ程の効果は見込めません。窃盗側がサンダー等の工具を所持していれば数分で切断されてしまいます。視覚的な抑止効果には期待できるため、他の予防策と合わせて行うことが重要です。
3つ目は周辺環境の整備。身も蓋もありませんが、これが最も効果的だと思われます。月極の砂利駐車場より自宅のシャッター付きガレージの方が安全なのは間違いありません。自宅以外の駐車場に止めるのであれば、機械式の立体駐車場など、外部から見えない場所を選びましょう。コインパーキング等を利用する際にも、平置きで長時間の放置は盗難リスクを高めます。安心できる駐車場を見つけることも必要になります。自宅の駐車場でも油断はできません。最低限、センサーライトの設置は行いましょう。ランクルを保管するのであれば監視カメラも考えるべきかもしれません。スマートキーは玄関先に放置せず、なるべく駐車場所から離れた場所に電波を遮断できる状態で保管します。自宅周辺の美観を保つことも防犯効果があります。屋外に駐車する場合は車内も整理された状態を保ちましょう。車上荒らしを防ぐ意味でも有効です。

まとめ

ランドクルーザーの盗難防止について見てきましたが、いかがだったでしょうか。自動車窃盗を完全に防ぐことは困難ですが、様々な抑止効果を積み重ねることで「盗まれにくい」環境を構築することが重要です。新たな窃盗の手口が次々と開発されていますが、盗難件数自体はこの10年でほぼ半減し、税関等での水際対策も強化されています。そうした影響もあり、盗難被害は特定高級車に偏る傾向が強くなってるようです。ランドクルーザーは引き続き世界中で供給不足の人気車種という状態が続くと考えられ、盗難被害に遭う確率も高い状態が続くでしょう。ランドクルーザーの盗難対策に今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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