モータースポーツ、特にWRCを愛する者にとって、「スバル インプレッサ」の名前が持つ響きは特別なものです。2008年にワークス活動を休止するまで、スバル インプレッサは単一車種で14年間連続で参戦し続けました。マニュファクチャラーズタイトルやドライバーズタイトルを幾度も獲得しています。
スバルのスポーツイメージのけん引役だったインプレッサでしたが、ワークス活動終了後はより幅広い層に受け入れられるようイメージチェンジ。4ドアセダンモデルが「インプレッサG4」と名乗るようになった後、それまでの「マニア向けのクルマ」というイメージを払拭することに成功し、日本国内のセダン販売台数ランキングでも常に上位にランクインする人気車種となりました。
今回は、そんなインプレッサG4のおすすめグレードについてご紹介します!
スバルの最廉価セダン、インプレッサG4
スバルのセダン・ラインナップの中で、もっとも安価に入手できるのがインプレッサG4です。2018年11月末現在、インプレッサG4の車両本体価格は1,944,000円〜2,613,600円(税込)となっていて、200万円を切るモデルがラインナップされていることに注目。どのモデルにも、スバルの誇る運転支援システムEyeSight(ver.3)が標準装備されています。
現行型のインプレッサG4は2016年10月に登場。当初は2リッターモデルのみで、同年12月に1.6リッターモデルが追加されました。全グレードでFFとAWD(4輪駆動)モデルが選択可能ですが、先代モデルまで設定のあったMTは残念ながらラインナップから外れてしまっています。トランスミッションはCVTであるリニアトロニックのみで、7速マニュアルモードを装備しています。
現行インプレッサは、スバルの新世代プラットフォームである「SUBARU GLOBAL PLATFORM」を初めて全面的に採用したモデルとなりました。操舵応答性と操舵安定性が高められたと同時に、衝突安全性も向上。以前にも増して乗員保護性能を高めながら、重量増加を抑えることに成功しています。
デザインについても、新デザインフィロソフィーである「DYNAMIC × SOLID」をスバルの量産モデルで初めて全面的に採用。流れるようなルーフラインと、ショート&ハイデッキデザインを組み合わせて、スポーティなイメージの強いエクステリアを実現。優れた空力性能をも獲得しています。
運転支援システムEyeSightはver.3に進化
スバルの誇る運転支援システムEyeSight(アイサイト)は、現行型インプレッサG4でver.3に進化。EyeSight搭載車は、非搭載車に対し約6割事故件数を減らした、と公式ウェブサイトで謳っています。EyeSightは、現行型インプレッサG4では全てのグレードで標準装備。自動車業界からもユーザーからも非常に評価の高いこのシステム、今一度おさらいしておきましょう。
EyeSightはステレオカメラで常に前方を監視し続け、そこから得られた情報で自動ブレーキなどの様々な制御を行うシステムです。ver.3ではカメラの視野角と視認距離が以前に比べて約40パーセント拡大。さらにカラー認識できるようになったことで、先行車のブレーキランプの色も認識することが可能になりました。
ステレオカメラは人間の目と同じく、距離や形状を認識できるようになっていて、クルマだけでなく、人間や自転車、白線やガードレールといった物体まで判別可能です。そこで得られた多彩な情報をソフトウェアが状況に応じてリアルタイムに判断し続け、エンジン、トランスミッション、ステアリングなど複数のユニットを制御します。
参考:セダンの買取専門ページです
具体的な機能を上げていくと、「プリクラッシュブレーキ」「アクティブレーンキープ」「全車速追従機能付クルーズコントロール」「AT誤発進抑制制御&AT誤後進抑制制御」「ふらつき・車線逸脱等の警報&お知らせ機能」などがあります。
プリクラッシュブレーキは、横断歩行者や自転車、先行車との衝突の危険性を早い段階で認識し、ドライバーに警報で注意喚起。回避操作がない場合はブレーキを制御して、自動的に減速、または停止するシステムです。全車速追従機能付クルーズコントロールは、0-100km/hの広い速度域で先行車に追従。渋滞時の使用も可能になったことで、ロングドライブ時の疲れを劇的に低減します。
アクティブレーンキープは、ステレオカメラで走行車線の区画線を認識し、ステアリング操作をアシストすることで、車線の中央部分の走行を維持したり、車線からはみ出さないようにする技術です。ふらつきや車線の逸脱を検知した場合は、警報音と警告表示でドライバーに知らせます。また、先行車が発進しているのに自車が発車しない場合も、音と表示で知らせる機能が備わっています。
EyeSightは他にも、AT誤発進抑制制御&AT誤後進抑制制御によって、駐車場での誤操作による急な飛び出しを抑制するなど、あらゆる場面で運転を支援するシステムとなっています。
選べるエンジンは1.6リッターか2リッターの2種類のみ
エンジンは先代モデルから継続して搭載されている2リッター「FB20」型と1.6リッター「FB16」型の2機種。どちらもスバル伝統の水平対向4気筒エンジンとなっています。型番こそ変わらないものの、どちらのエンジンも先代モデルからは大幅に改良されています。
「FB20」型は約80パーセントの部品の設計を見直し、さらに燃料システムを直噴化。先代モデルのエンジンに比べ約12kgの軽量化と3psの出力アップを実現。燃費とトルクを改善しました。最高出力は154ps、最大トルクは196Nmとなっています。
「FB16」型は最大トルク、最高出力の数値は変わらないものの、燃費の向上、大幅な軽量化、振動・騒音の低減を実現。操縦安定性もより向上しました。最高出力、最大トルクの発生回転数が変更されており、最高出力115ps/6200rpm、最大トルクは148Nm/3600rpmとなっています。
先述した通り、現行型からはMTモデルがなくなってしまったので、選べるミッションはリニアトロニックと呼ばれるCVTのみとなっています。
インプレッサG4のおすすめグレードはこれだ!
セダンラボの選ぶインプレッサG4のおすすめグレードは、「1.6i-L EyeSight」、それもFFモデルです!最も安いグレード、しかもスバルなのにAWDを選ばないという、熱心なスバリストには怒られそうな選択ですが、その理由を述べていきましょう。
1.6i-L EyeSightに装着されるタイヤサイズは前輪・後輪ともに205/55R16 91Vのブリヂストン・トランザT001となっています。より上級のモデルに装着される17インチホイールや18インチホイールに比べると全体的な見た目はあまり良くないかもしれませんが、16インチのホイールはきちんとアルミ製で、デザインもなかなかの優れもの。筆者は常々、扁平率の低すぎるタイヤはコンパクトカーや手頃なセダンには不相応と考えているのですが、16インチアルミホイールに55扁平のタイヤは、インプレッサG4のシャシー性能にベストマッチ。落ち着いた乗り心地と素直なステアリングフィールを提供してくれます。
1.6リッターエンジンは115psと2リッターモデルに比べて非力ではありますが、インプレッサG4の美点はどこまでも走っていけそうな優れたロングツーリング性能にあります。法定速度を大幅に超過したり、頻繁に急加速をしたり、という走り方をしなければ、1.6リッターエンジンでも必要十分なパワーを提供してくれるでしょう。またFFモデルを選べばAWDモデルより約60kgも軽く、操縦性も良好なうえ、燃費も向上するなど「AWDが絶対に必要だ」というユーザー以外にはFFをおすすめします。
アイサイトやフルオートエアコン、マルチファンクションディスプレイは「1.6i-L EyeSight」でも標準装備、シートの形状やチルト&テレスコピックの可動域が大きいステアリングホイールなども上級グレードから引き継がれているおかげで、シートポジションもピタリと決まります。この内容のセダンが車両本体価格1,944,000円(税込)で手に入るのは、お買得と言って良いでしょう。
ベーシックモデルにも脈々と息づく、スバルらしさ
最も安いグレードのモデルでも、安全性能に抜かりはなく、走りの面や操縦性に関してはしっかり作りこんであるインプレッサG4の「質実剛健さ」は、ヨーロッパの上質なベーシックカー、例えばVWゴルフのエントリーグレードに乗った時の感覚に近いものがあります。見た目の格好よさだけでなく、「実際にクルマを運転するとどうなるのか」ということを真摯に突き詰めて作られたインプレッサG4の良さは、エントリーグレードの「1.6i-L EyeSight」でも感じられる・・・というより、最も濃厚に味わうことができると言えるでしょう。
そんな「セダン好きの通の選択」として、インプレッサG4「1.6i-L EyeSight」のFFモデルを今一度おすすめして、この項を締めたいと思います。インプレッサG4のグレードを選ぶ時の一助になれば幸いです。ではまた次回お会いしましょう!
[ライター/守屋健]