コラム

「国内最速セダン」の称号がよく似合う、トヨタの誇る傑作スポーツセダン、アリスト。一体何が凄かったのか?

最速スポーツセダン。この言葉の響きにわくわくするのは日本人だけではないらしく、ドイツやイタリアから今も多くの傑作スポーツセダンが登場し続けています。ところが、セダンの存在感が年々失われている日本では、「スポーツセダン」というジャンル自体が絶滅危惧種のような扱いを受けていて、年々選択肢が狭まってきています。
さらに近年は、控えめさが美徳だったE28型のBMW・M5や、AMGがカタログモデルを作り出した当初のメルセデスAMG・C36のような、大人しいスタイリングのスポーツセダンはほとんお目にかかれず、ホンダ・シビックタイプRのように、巨大なリア&フロントスポイラーなどのエアロパーツなどで見た目にもアグレッシブさをアピールするのが主流。控えめで上品なデザイン、なおかつ速いスポーツセダンは、世界的にも希少となってきているのです。
今回は、まだこの日本で多くのスポーツセダンが登場していた頃、優美なデザインのボディの中に強心臓を隠し持ち「国産最速セダン」と呼ばれた一台、トヨタ・アリストを紹介します。日産・シーマと並び、時代を代表するセダンとなったアリスト。その魅力に今、改めて迫ります!

ライバルはシーマ

アリスト登場のきっかけとなったのは、日産・シーマ(正確には初代Y31型のセドリック/グロリアシーマ)の存在でした。1987年の東京モーターショーで発表されるや否や、500万円以上という販売価格帯にも関わらず、年間販売台数3万台を超える大ヒットを記録します。このクラスのクルマの年間販売台数は、当時の日本全体で約3万台でした。シーマはたった1車種でこの記録を上回る台数を売り上げ、「シーマ現象」という言葉が流行語大賞の銅賞に選ばれるなど、社会現象を巻き起こすほどの人気車種となるのです。
参考:トヨタの誇る傑作アリストの買取専門ページ!
シーマが売れた大きな要因は、ラグジュアリーなセダンを自ら運転するドライバーのために、高いパフォーマンス性能をも両立させた点にありました。特に、最上級グレードに搭載されていた3リッターDOHCツインターボエンジンは、当時としては驚異的な255psの最高出力を発揮し、同社のスポーツカーであるフェアレディZ以上の俊足を誇ったのです。
シーマの成功に大きな刺激を受けたトヨタは、「打倒シーマ」を目標に次期クラウンの開発を開始します。しかし、長年クラウンを指名買いするオーナーを無視できないトヨタは、クラウンの本流とは別に、よりラグジュアリー&ショーファードリヴン寄りのクラウンマジェスタと、そのクラウンマジェスタとシャシーを共有しつつも、思いっきりスポーツ志向に振ったアリストの開発を決定します。

それまでのトヨタとは一線を画すエクステリアデザイン


出典:ウィキメディア
アリストの初代モデルがデビューしたのは、結局バブル経済崩壊後の1991年10月でした。月間の目標販売台数は3500台。シーマの売り上げすら大きく超える数字を目標として売り出し、デビュー当初はそれでも納車待ちになるなど、販売当初から好調な滑り出しを記録しました。
マジェスタは当時の流行だったハードトップでしたが、アリストはセルシオにも通じる重厚なプレスドアデザインとし、ボディ剛性の高さを感じさせるデザインとなっています。ボディサイズは全長4,865mm、全幅1,795mm、全高1,405mm、ホイールベース2,780mmという堂々とした大きさで、大人5人が快適に移動できる室内空間が確保されていました。
ロングノーズ、ハイデッキ。リアエンドに緩やかに上昇していくサイドからの眺めと、どっしりとした重厚感のあるスタイリングは、それまでのトヨタ車とは一線を画す独特のデザインでした。基本デザインを担当したのはイタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロで、トヨタ社内のデザインチームがブラッシュアップし、全体のスタイリングを完成させています。第二次世界大戦期の重戦闘機を思わせるような、ずっしりとした重々しい雰囲気とスピード感が同居したデザインは、アリスト独特と言ってもよいでしょう。
初代アリストのエンジンは3種類。デビュー当初は、3リッター直列6気筒の自然吸気DOHCとDOHCツインターボの2種類が用意され、のちに4輪駆動モデル専用としてセルシオに搭載されていた4リッターV型8気筒自然吸気DOHCエンジンが加わりました。3リッター自然吸気モデルは「3.0Q」、ツインターボモデルは「3.0V」、4輪駆動モデルは「4.0Z i-Four」のグレード名が与えられています。

アリストとスープラだけの、特別なエンジン

特に注目したいのは、メイングレードとも言うべき「3.0V」に搭載されたツインターボエンジンです。型式名「2JZ-GTE」と呼ばれるこのエンジンは、アリスト以外ではA80型スープラにしか採用されておらず、ファン垂涎の的となっています。最高出力は自主規制枠いっぱいの280ps/5600rpm、規制が存在しない最大トルクについては44kgm/3600rpmを発生。
しかも、当時の国産スポーツエンジンの例に漏れず、非常に高いチューニング耐性をも備えており、吸排気系とコンピューターの軽いチューニングで400psオーバーを達成し、フルチューン時では1000psも可能なほど頑丈なエンジンとして知られています。トランスミッションこそ4速ATのみでしたが、リミッター解除で軽く250km/h超えを実現し、0-400m加速は13秒台を記録するなど、圧倒的な動力性能を誇りました。
この強力なエンジンを支えるため、足回りも当時のトヨタの最新技術が投入されました。トラクションコントロール、4輪ABSはもちろん、ターボモデルの「3.0V」には電子制御サスペンションのTEMSを採用しています。サスペンションの形式は4輪ともダブルウィッシュボーンとして、タイヤの路面追従性を最大限に高める設計となっています。さらに、強化のためのサブフレームや、パフォーマンスダンパーを装備することで、決して軽くはないボディをワインディングでも軽快に走らせる運動性能を手に入れました。
ちなみに、ライバルだったはずのシーマは、アリスト登場と同時期にフルモデルチェンジした際になんとターボモデルを廃止。それまでのハイパフォーマンスセダンというイメージから脱却し、よりラグジュアリーなセダンへと方向転換してしまいます。かくして、アリストは登場と同時に、国内ではライバル不在の「孤高の存在」となったのです。

正常進化を果たした2代目


出典:ウィキメディア
初代アリストは最終的に約6万9千台を生産し、1997年8月に2代目モデルへフルモデルチェンジを果たします。2代目モデルの最大の特徴は、新規に開発されたプラットフォームを採用し、それまでのクラウンマジェスタと共通のシャシーではなくなったという点です。トヨタが改めて新設計したこのプラットフォームは、のちの同社、そしてレクサスの、多くのFRセダンに採用されていくことになります。
このプラットフォームでは、改めてエンジンの搭載位置や前後の重量配分を見直し、2代目アリストで前53:後47と、ほぼ50:50を達成。先代モデルに比べてオーバーハングを切り詰めることで、さらなる運動性の向上を図っています。
トヨタ・セリカやメルセデス・ベンツ・Eクラス(W211)を思わせる丸目4灯のヘッドライトが目をひくエクステリアは、ジウジアーロによるものではなく、全てトヨタ社内のデザインとなりました。剛性の高さがそのまま形になったようながっちりとしたデザインは、先代に引き続きアリスト独特の雰囲気をまとっています。
エンジンは4リッターV8が廃止され、3リッターの自然吸気モデル「S300」と、ツインターボの「V300」の2グレードとなりました。1996年7月の先代モデルの一部改良時、ツインターボエンジンに可変バルブタイミング機構(トヨタでは「VVT-i」と呼称)が追加されましたが、それをそのまま受け継いでいます。最高出力は変わりありませんが、最大トルクはさらに2kgm増しの46kgmとなっており、ドライバビリティはさらに向上しました。
しかしこの頃には、すでにセダン自体の売り上げが下火になっており、アリストはその中でも健闘するも、2005年8月をもって販売終了。この代を最後にカタログから消滅します。レクサス・GSは実質的な後継車と言えるのかもしれませんが、アリストの持っていた独特の凄みや雰囲気、パフォーマンス重視のクルマ作りなどは失われてしまいました。
すでに生産終了から15年が経過したトヨタ・アリスト。幸い中古車市場では現在でも多くの車両が流通していますが、クルマの性格上オリジナル状態で維持されているクルマは少なく、またそうしたクルマは高値の傾向にあります。とはいえ、本格的な「クラシックカー」になってしまう前に、ぜひ一度味わってみたい名車のひとつであることに違いはありません。今から乗りたいという方はぜひお早めに!
[ライター/守屋健]

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ユーズトカーラボ 編集部
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