みなさん、こんにちは!今回はスバルのSUVの特徴について、じっくり取り上げていきたいと思います。スバルの乗用車ラインナップはシンプルで、他の国産メーカーに比べて選択肢が多い方ではありませんが、独自の哲学とそれを形にする技術力の高さで、国産車の中でも独特の立ち位置を築き上げています。
そんなスバルがつくるSUVには、どんな特徴があるのでしょうか。この記事では、スバルの独自技術の紹介を中心に、スバルのSUVが持つ魅力の一端に触れていきたいと思います。では、早速見ていきましょう!
今やポルシェとスバルのみ?希少な水平対向エンジン
スバルはよく知られている通り、航空機メーカーをルーツとするメーカーです。今なお航空機産業部門で多くの成果を上げ続けているスバルは、自動車部門についてはトヨタや日産などに比べれば規模は小さいものの、高い技術力を生かしたクルマ作りを続けています。
その技術の結晶のひとつが、スバルがこだわり続ける水平対向エンジン。軽量で、重心が低く、振動が少なく、左右の重量バランスが等しくなるという、ある意味では理想のエンジン型式ではあるのですが、一方でエンジンの横幅の増大や、オイル潤滑系に関する問題が出やすい、求められる組み立て精度が高いなどの欠点があります。
また、燃費に有利なロングストロークのエンジンを設計しにくいなどの理由から、現在市販車に採用しているのはスバルとポルシェのみとなっています。
しかし、長年にわたって磨かれてきた水平対向エンジン、いわゆるボクサーのエンジンフィーリングはまさに絶品。独特の排気音も特徴で、「やっぱりエンジンはボクサーでないと!」というファンは数多く存在します。
また、エンジンだけでなくクルマ全体で低重心化が図られた結果、SUVとしては異例の走行安定性を獲得。安全かつ楽しい走りを生み出す原点となっているのです。
バランスにとことんこだわる!シンメトリカルAWD
バランスにこだわるのはエンジンだけではありません。スバルの四輪駆動システム「シンメトリカルAWD」は、前後左右の重量バランスをきっちりと追い込んだ独自の駆動技術です。左右対称の水平対向エンジンを核に、パワートレイン全体も左右対称、一直線にレイアウト。さらに、トランスミッションも車体の重心近くに配置しています。
この結果、4輪全てにバランスよく荷重がかかることになり、タイヤの接地性が高くなるため、駆動力が無駄なく地面に伝達されるようになりました。高速道路や雨天、雪道での走行など、あらゆる状況下での安定した走りを可能にしているのです。
また、重量物を中心近くに集めたことで、ブレーキング時やコーナーリング時の慣性モーメントが小さくなりました。それによって車体が揺さぶられにくくなり、乗り心地がよくなったほか、スポーティで軽快なハンドリングも楽しめます。
どんな状況下でも変わらぬ安定感のある走りと、いつでも楽しく軽快なドライビングフィールを実現する。文字にすると簡単ですが、スバルは電子制御デバイスだけでそれを実現しようとするのではなく、メカニカル面、さらにいうと物理法則の面からクルマの構造を見つめ直し、全てのSUVに「シンメトリカルAWD」を採用しているのです。
モーターを搭載してもバランスは崩さない!こだわりの「e-BOXER」
スバルは高性能だけど燃費が悪い…長らくそんな意見がささやかれていた中、ついに登場したのがスバルのハイブリッドシステム「e-BOXER」です。高効率の2リッター直噴水平対向エンジンに、モーター1基を組み合わせた、一見するとシンプルなシステムにまとまっているように見えます。また、このモーターの最高出力は13.6ps(スバル・XVの場合)とかなり非力な部類です。
しかし、ここにもスバル独自のこだわりが生きています。モーターは無段階変速のトランスミッションに接続され、しかもモーター自体は非常に小型軽量。重量バランスを極力崩さないよう配慮されているのです。バッテリーはリアの車軸付近に充放電効率に優れたリチウムイオンタイプを配置。こちらも前後の重量バランスと低重心を極力崩さないよう配慮されています。
「e-BOXER」搭載モデルの乗り味も独特です。多くのメーカーのハイブリッドモデルは、燃費走行を重視した結果、モーターが走行時の主役となっている場合が多く、加速・巡行・減速などの各場面で制御がうまくいかずギクシャクすることもありますが、スバルは明確に「エンジンが主役」。
モーターはあくまで黒子に徹し、エンジンが主体の制御となっているため、ドライブフィーリングはとても自然で、ハイブリッドモデルに乗っているという感覚はほとんどありません。その分、燃費性能については良好とは言い難いですが、スムーズで自然な運転感覚を好む方には、スバルの「e-BOXER」はうってつけと言えるでしょう。
全ての車種がAWD(常時全輪駆動)
スバルがあまり燃費性能を重視していないのでは?とうかがわせるもうひとつのポイントが、スバルのSUVにはFFモデルが一切用意されていないということ。そう、SUVの全てがAWD、常時全輪駆動という潔さ!
国産の他のメーカーを見ると、本格クロスカントリーモデル以外のSUVでは、全輪駆動モデルの他に、街乗り重視のユーザーや燃費を気にするユーザーのために2輪駆動のFFモデルをラインナップしている場合がほとんどです。スバルはそうした対応は取らず、SUVはシンプルに「全てAWD」となっています。
スバルが重視しているのは、あくまで走破性と安定性。スバル・XVを例に挙げると、地上最低高200mmを確保した上、きちんとそれを生かしきれるように床下は真っ平らに作り、可動部品は極力露出しないように配慮されています。
カタログ上のスペックを誇るだけでなく、スペックを生かし切れてこその性能だ、との主張がうかがえますね。こうした真摯な姿勢とクルマ作りも、スバルのSUVの特徴のひとつと言えるでしょう。
全ては走破性と安全のため。「X-MODE」と「ヒルディセントコントロール」
スバルの独自技術のひとつが、ここで紹介する「X-MODE」です。雪道での発進時や、悪路の走行時にタイヤがスタック(空転)して発進ができないという際に、X-MODEのスイッチをオンにすると瞬時に制御が介入。
トランスミッションやAWDだけでなく、ブレーキやエンジンなどもまとめて統合制御し、スムーズな脱出に貢献するというシステムです。ハードなアウトドアでの走行や、雪道を日常的に走る方にとって、非常に頼りになるシステムと言えるでしょう。
もうひとつ、走行時の安全・安定性を高める独自技術が「ヒルディセントコントロール」です。特にオートマチック車の場合、下り道を走っていると急速に速度が上がってしまう場合がありますが、「ヒルディセントコントロール」はそんな時に威力を発揮。常に一定の車速で下ることが可能になり、ドライバーはハンドル操作に集中できます。また、雪道や砂道など、ブレーキ操作に気を使う場面などでも安心して走行可能です。
予防安全だけでなく、「0次安全」をも追求
スバルが追い続ける安全の中でも、特にユニークなのが「0次安全」という概念です。
これは、良好な視界の確保、ドライバーが運転に集中できるコクピットのインターフェース、長時間運転しても疲れにくいシート、誰もが正しい運転姿勢を取れる調整幅の大きいチルト&テレスコピックステアリング、オートワイパーやステアリング連動ヘッドランプなどの採用により、まず何よりドライバー自身が危険に気付きやすい・対処しやすい環境を作る、という考え方です。
これらの考え方がスバルのSUVに投入された結果、特に視界性能の面において、他社製SUVと比べて非常に優れた全方位視界が確保されています。ピラーの位置や形状、ドアミラーの位置の工夫など、運転に最も大切な「視界」の確保に全力が傾けられた結果と言えるでしょう。
他にも、高度な予防安全システム「アイサイト」や、優れた衝突安全性能もスバルのSUVの大きなメリット。スバルのこうした安全への取り組みが、どんな状況でも、ドライバーの今のままに走れるクルマの実現につながっているのです。
[ライター/守屋健]