コラム

トヨタ渾身のFRスポーツセダン、アルテッツァ。一代限りで終わった不遇の名車を味わうなら今!

みなさん、こんにちは!今回はトヨタ久々のFRスポーツセダンとして開発されたものの、一代限りで生産を終えてしまった不遇のクルマ、アルテッツァについて紹介します。国内だけではなく、海外の名だたるスポーツセダンを仮想敵として開発されたアルテッツァは、当時としては非常に高いシャシー性能とボディ剛性を備えた、バランスの取れたスポーツセダンとして結実。国内での販売こそ振るわなかったものの、その優れたドライブフィーリングは、走りにこだわるドライバーたちを魅了しました。
2005年の生産終了から15年近くが経ちますが、国内の中古車市場では現在でも200台以上が流通し、この手のスポーツセダンとしては珍しく、予算に合わせて選べるというのもポイントです。この記事では、アルテッツァとはどんなクルマだったのか、じっくりと振り返っていきます!

ライバルは欧州のスポーツセダン

1990年中盤、1998年の発売を目指してアルテッツァの開発がスタートしました。もともとのコンセプトは「コンパクトなFRスポーツセダン」というシンプルなもの。しかし、開発途中だった他のスポーツセダンと計画統合されたり、レクサスの欧州戦略においてメルセデス・ベンツ・Cクラスやアウディ・A4、BMW・3シリーズなどの対抗車種(いわゆるDセグメント)として開発されることになったりという経緯で、ボディは大型化されることになりました。
単にスポーツセダンというだけではなく、プレミアムセダンとしての役割を担うことになったアルテッツァは、国外ではレクサスのエントリーモデル、初代「IS」として販売されることになりました。従って、求められるボディ剛性や衝突安全性能は、国内専用車よりもずっと高いレベルになり、アルテッツァは過酷とも言える走り込みを実施することになります。
参考:セダンの買取専門ページです

過酷な走り込みで得た高剛性ボディ

アルテッツァの開発チームは、まずニュルブルクリンクに試作車を持ち込み、走り込みを始めます。1周走っただけでサスペンションの取り付け位置がずれるなど、最初から困難の連続でしたが、2日間で2,000kmの走破テストを行うことで、シャシーやサスペンション周りの改良点を見つけていきました。
改良を施した試作車で今度は2週間で20,000kmのテストを行い、さらにボディ剛性やサスペンション周りのセッティングを煮詰める作業を実行。そうしたテストを約2年間、ニュルブルクリンクで徹底的に行ったのち、次は公道での開発に移ります。
ドイツのアウトバーン、その速度無制限区間での全開走行、フランス・アルプス山岳地帯での走行、北海道での真冬での走行など、様々な路面状況でアルテッツァは鍛え上げられていきました。「計算よりも、感性で開発を行った最後の世代」と開発者が語るように、テストドライバーとエンジニアの感性がアルテッツァを作り上げていったのです。
その結果、アルテッツァは国産車としては異例とも言える非常に高いボディ剛性と、優れた衝突安全性能を獲得。当時の日本のセダンとしては重量級の1,300〜1,400kgという車重となってしまいましたが、ガッチリとしたボディが生む安定感のある走りは、他車では味わえないものでした。

当時最強の2リッターNAエンジンを搭載


出典元:ウィキメディア
重量は少々かさむものの剛性の高いボディ。この車体を生かすために搭載されたエンジンは2種類ありました。ひとつは2リッターの直列6気筒エンジン、1G-FE型。もうひとつは、同じく2リッターながら直列4気筒、スポーツ仕様として値段も高かった3S-GE型です。
1G-FE型は1988年から2008年まで生産された長寿のDOHCエンジンで、アルテッツァ搭載仕様は最高出力160ps/6,200rpm、最大トルク20.4kgf·m/4,400rpmを発生。こちらのエンジンを搭載したグレードは「AS200」と呼ばれました。
当初は4速ATのみでしたが、のちに6速MTが追加。直列6気筒エンジン搭載のスポーツセダンとして長らく人気の高かったチェイサーの廃止に伴い、同車からの乗り換え組の多くが「AS200」のAT仕様を選んだ、と言われています。
3S-GE型は、トヨタ製のエンジンブロックにヤマハ製のシリンダーヘッドを搭載した、高出力でスポーツ志向の直列4気筒エンジンです。1984年、2代目カムリに初めて採用されて以降着実に進化を遂げ、アルテッツァ搭載仕様については自然吸気版3S-GE型の最終進化系と呼べるものになっています。
可変バルブタイミング機構は吸気側・排気側両方に採用され、6速MTモデルについては加工の難しいチタンバルブが組み込まれるなど、当時最先端の技術が投入されています。このエンジンの搭載グレードは「RS200」と呼ばれ、4気筒エンジン搭載車でありながらアルテッツァの最上級グレードとして設定されていました。
3S-GE型の最高出力は210ps/7,600rpm、最大トルクは22.0kgf·m/6,400rpm(6速MT車)を発生し、当時の日本製2リッター自然吸気エンジンでは最も強力な出力を誇るエンジンとなりました。もともと横置き型だった3S系エンジンをわざわざ縦置きに設計変更し、縦置きエンジンのFRとして理想のバランスも追求。ボディ剛性確保のために重くなってしまった車体を力強く引っ張り上げます。

サスペンションやブレーキにも妥協なし


出典元:ウィキメディア
サスペンションは、前後輪共に高級セダンや本格派スポーツカーに用いられるダブルウィッシュボーン式という贅沢な構成。トヨタではスープラやクラウンといった車格に用いられる形式を惜しげもなく採用するあたり、走り優先の設計思想がうかがえます。ボディにマウントする際には頑強なサブフレームを介して組み付けていて、運動性能の向上のみならず、乗り心地の改善にも一役買っています。
クルマの中でも最も重要な部品のひとつ、ブレーキ。アルテッツァのブレーキは、スポーツ志向の6速MT車については特に強化されています。17インチホイールを採用することで、フロントはより車体が重く大きいアリスト用を流用、リアに至ってはアリスト用よりもさらに1サイズピストン径が大きいブレーキキャリパーとローターが採用されています。
これらの採用により制動性能は非常に高く、またマイナーチェンジ後はGセンサー搭載の「スポーツABS」に改良されるなど、スポーツセダンのブレーキとして十分以上の性能を得ていました。
エクステリアのデザインは、全長4,400mmというそれほど長くない車体に、3ナンバーサイズの全幅1,720mmという、力強く踏ん張ったプロポーションが印象的。車体に比べて長いホイールベースと切り詰められた短いオーバーハングという、スポーツセダンらしいエクステリアとなっています。
当時としては大径・低扁平の17インチ・45扁平タイヤもスポーティな雰囲気。トヨタ車としては珍しく、エクステリア・インテリアともにトヨタのコーポレートアイデンティティが一切貼られていない、という点も特徴です。
インテリアのデザインで目を引くのは、クロノグラフをイメージしたメーター類です。初期型はスピードメーター内に、後期型はタコメーター内に、水温計や電圧計などの計器を配した独特のデザインを採用。
見やすさという点ではあまり優れているとは言い難いですが、気分が高揚するデザインであることはたしか。後期型は質感も向上し、タコメーターが中央に来ることでマニュアル派のドライバーにとっては視認性も改善されています。

現在でも200台前後が流通。乗るなら今!


出典元:ウィキメディア
トヨタ・アルテッツァは生産終了からすでに15年が経過しようとしていますが、国内での販売が振るわなかった割には、現在でも多くの個体が中古車市場で流通しています。価格も30万円台から200万円台まで広がりがあり、個体数も200台前後と、予算に合わせて探すことが可能です。
オリジナル度の高い個体に乗って、新車当時の雰囲気を味わうもよし。安いベース車両を買って、自分でいじってレースに参加してみるもよし。約15年前の車種としては、アフターパーツについても充実している方だと言えるでしょう。
1代限りで終わってしまった、トヨタ渾身のFRスポーツセダン、アルテッツァ。これからさらに個体数が減り、本格的なクラシックカーとなってしまう前に、ぜひ一度味わってみたい名車ですね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
[ライター/守屋健]

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