もしもホンダ ヴェゼルやトヨタ C-HRなどの売れ筋SUVが好きで好きでたまらないというのであれば、もちろんそれはそれでいい。
だが世の中には、ああいった超メジャーな売れ筋はどうも好かん――とまでは言わないものの、正直あまり乗る気になれないというマイナー趣味な人間も、筆者を含めけっこういるものだ。
そのような「長いものに巻かれる」のがあまり好きではないSUV愛好家が、大ぶりなモノではなくヴェゼルぐらいの比較的コンパクトなSUVを買おうとした場合、おすすめとなるモデルは果たして何だろうか?
ハンガリーで生産され、少数が日本へやってくる「輸入車」
その答えのひとつが、筆者が今実際に所有しているスバルXVであるとは思う。だがもう少しコンパクトなサイズでも構わない場合には、まあまあ強くおすすめしたい一台のSUVがある。
2018年12月にマイナーチェンジを行った最新世代のスズキ エスクードだ。
1988年から1997年まで販売された初代エスクードは軽快感と本格感が同居したライトクロカンとしてスマッシュヒットを記録した。だが2015年から販売されている4代目(現行型)は、どうにも陰が薄い。
それもそのはずで、現在のスズキ エスクードは日本車ではなく「スズキの世界戦略車」であり、生産もハンガリーのマジャールスズキ社で行われている。現行型エスクードの主戦場はあくまで欧州で、日本へは、そのおこぼれ(?)として1グレードのみが細々と輸入されている状況なのだ。
聞くところによれば、現行型エスクードの販売目標は年間わずか1200台。つまり「月に100台も売れれば御の字」というヌルい販売目標なのである。
スイスポと同じエンジン、そして先進安全装備も大きな魅力
だが現行型エスクードという車の出来自体はまったくヌルくない。
搭載エンジンは現行型スイフトスポーツと基本的に同じ「K14C」、つまりあの胸のすく1.4L直4直噴DOHCターボだ。スズキはこの1.4L直噴ターボエンジンを「2L NAエンジン並みの実力」と言うが、確かにそのとおりであると筆者も思う。そしてトランスミッションはこのクラスにありがちなCVTではなく、パドル付きの6速ステップATである。
サスペンションは前輪/ストラットで後輪/トーションビームというごく普通の方式だが、さすがは「欧州車」といったところか、ロードホールディング性能と乗り心地の良さは完全にクラスを超えている。駆動方式はフルタイム4WDで、これは「ALLGRIP(オールグリップ)」と名付けられたスズキ独自の新世代四輪制御システムだ。
そして現行型エスクードは、いわゆる「先進安全装備」においても抜かりがない。
それまでの「レーダーブレーキサポートII」から、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを使った「デュアルセンサーブレーキサポート」に変更。さらにはブラインドスポットモニターとリアクロストラフィックアラートも標準装備。そしてこれまた標準装備されるACC(アダプティブクルーズコントロール)も、全車速対応に進化している。
「2トーンルーフ」を選べばまあまあオシャレでもある
現行型スズキ エスクードはこのように、なかなか充実した内容を伴っているSUVであると同時に、デザイン面もけっこうイケている。
や、このあたりは人それぞれの好みによる部分も大なので、実際はなんとも断言し難い部分ではある。そして筆者も、プラス4万3200円の有償オプションである「2トーンルーフ」を採用していない現行エスクードのビジュアルについては「……正直、地味だな」とも思っている。
だが4万3200円也を追加して2トーンルーフを選んだ場合は、特に「アイスグレーイッシュブルーメタリック×ブラック」または「ブライトレッド5×ブラック」を選んだ場合に関しては、なかなかいい感じなのではないかと思う。
そして現行型スズキ エスクードは「まあまあお安い」というのも大きな魅力だ。車両本体価格は競合よりずいぶんお安い265万8960円で、そこに前述の2トーンルーフ(これはマストと考えたい)をプラスしても270万2160円。
もちろんこのほかにカーナビなどのオプション装備代や税金、販売店手数料などが必要になってくるわけだが、そこそこ大きいはずの値引きも込みで考えれば、乗り出し価格はおそらくは280万円前後になるはず。
SUVとしてのクオリティと、そしてマイナー趣味の人間にとってはたまらない希少性も考えれば、「納得のお安さ!」と評せるのではないだろうか。
現行型スズキ エスクードは、「ヴェゼルやC-HRはどうしても性に合わない」と考えている各位がコンパクトSUVの買い替えを検討する際には、少なくとも「候補のひとつ」にはぜひとも入れてほしい、なかなかステキで、地味ではあるがシャレオツな小型SUVである。
[ライター/伊達軍曹]