みなさん、こんにちは!今回は、日産を代表する高級セダン「シーマ」を紹介します。シーマといえば、初代モデルの鮮烈なデビューと興隆がいまだ記憶に残っている方も多いのではないのでしょうか。当時の日本車の中では頭ひとつ洗練されたデザインと、ターボエンジン由来の強烈な加速性能は、クルマ好きのみならず、多くの人々を虜にしました。
その後、バブル経済の崩壊や、SUV・ミニバン勢の台頭により、シーマは一度日産のラインナップから消滅します。しかし、シーマの復活を願う声は少なくなかったのでしょう。見事復活を果たし、2019年現在、5代目モデルの生産が続けられています。
この記事では、改めて日産シーマの魅力に迫るとともに、おすすめのグレードも紹介。2012年から生産が続けられる意外なロングライフモデル、5代目シーマの情報を中心にお伝えしていきます。
一般オーナー向け最上級モデル、シーマ
日産シーマは、日産のラインナップ中、一般オーナー向けの最高級セダンとして君臨。かつては法人・ハイヤー用の高級セダンとして「プレジデント」が存在していましたが、「プレジデント」とは異なり、オーナー自らがハンドルを握って運転する、よりパーソナルな性格の4ドアセダンという位置付けがなされています。
初代シーマが登場が発売されたのは1988年。世はバブル経済真っ最中で、人々の所有するクルマも年々大きさが拡大していき、3ナンバー車に一般オーナーが乗るということも次第に珍しいことではなくなっていった時代でした。そんな中発表された初代シーマは、セドリック・グロリアと共通のプラットフォームを使用しながら、3ナンバー専用車両として登場。ライバル車のひとつであるトヨタ・クラウンと熾烈な争いを繰り広げました。
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初代モデルの特徴といえば、乗り心地の良い電子制御サスペンション、ターボを搭載したV6エンジンによる豪快な加速、伸びやかで洗練されたデザインのエクステリアが挙げられます。これらが非常に高いレベルでバランスしていたシーマは、デビュー初年度に約3万6千台、初代のモデルの4年間の累計では約12万9千台と大ヒットを記録。「シーマ現象」と呼ばれるほどの成功を納め、多くの日本車の「その後」に大きな影響を与えました。
1991年には早くも2代目モデルにバトンタッチ。初代モデルのようなターボエンジンは用意されませんでしたが、強烈な加速もシーマのアイデンティティの一つと考えた日産が用意したエンジンは、自然吸気4.1リッターV8!のちに先代からの流れを組むV6ターボも追加されますが、大排気量自然吸気エンジンのリニアな加速は、先代のファンも納得する豪快さで人気を博しました。
1996年には3代目モデルが登場します。それまでのシーマは、線が細く繊細なイギリス風の外観でしたが、 この代で一変。メルセデス・ベンツやアウディを彷彿とさせるドイツ風の、押し出しの強いデザインに変更されます。また、このモデルが生産されている時期に、日産の当時の最上級セダン「インフィニティQ45」が生産終了となり、名実ともに日産の最高級パーソナルセダンとして君臨することになりました。トヨタ・クラウンだけでなく、クラウン・マジェスタやセルシオとも競合していく中、経済の後退から次第に販売台数にかげりが出てきます。
2001年に4代目モデルがデビュー。しかし、国内のセダン需要が少なくなる中、高価なシーマは販売台数をさらに減らしていき、2009年の年間販売台数はわずか294台と、かつての勢いを完全に失ってしまいます。販売不振と新しい衝突基準に対応できないという理由で、2010年に生産終了となりました。22年の間販売されたシーマは、日産のラインナップから一旦姿を消したのです。同時に法人向けの「プレジデント」も販売を終了し、日産からV8エンジン搭載車が消滅しました。
その後、日産の最高級車は「フーガ」が担っていましたが、代々シーマを乗り継いできた層から「代わりに買うクルマがない」という声が少なからず寄せられていました。そこで日産は、フーガのハイブリッドモデルをベースにホイールベースの延長やデザインのブラッシュアップを行い、約2年の空白期間を経て5代目シーマをデビューさせます。
非常に手の込んだ生産工程
現在の多くの日産車と同じく、国際戦略車であるインフィニティ・ブランドのクルマと兄弟車関係にあり、「インフィニティM35h」と基本的に同じ車両となっています。フーガをベースに150mm延長されたホイールベースとリアドアは、後席のスペース拡大にほとんどが振り分けられ、初代モデルに比べると、よりショーファードリヴン的志向が強くなっていると言えるでしょう。5代目シーマは三菱自動車工業にもOEM提供され、2012年から2016年まで「ディグニティ」として販売されていました。
搭載されるパワートレインは、ハイブリッド1種類のみで、3.5リッターV6エンジンに1モーター2クラッチを組み合わせた「インテリジェント・デュアルクラッチ・コントロール」と呼ばれるシステム。フーガに採用されていたハイブリッドシステムと基本的には同一で、車重1.9トンのボディを軽々と引っ張る能力を備えています。燃費性能はJC08モードで16.6km/Lと、全長5,120mmの大柄なセダンとしては優秀な数値を記録。日々長い距離を走破するユーザーには嬉しいですね。
生産拠点は日産の栃木工場です。シーマは、仕上げの品質をさらに向上させるために、塗装の工程で一旦ラインから外し、「匠」と呼ばれる熟練工が中塗り後に1台1台、塗膜をさらに滑らかにする「水研ぎ」と呼ばれる作業を行います。再びラインに戻し、塗装・最終組み立てが行われ、2名体制での厳密な実走行を含む検査ののち、栃木工場長の直筆署名入り「品質検査確認書」が発行されるなど、非常に手の込んだ、かつ品質に関して細心の注意を払った生産体制が取られています。
ズバリ、シーマのおすすめグレードは?
シーマのパワートレインは1種類しか存在しないため、ラインナップもシンプルに3種類のみです。
・CIMA HYBRID VIP G 9,026,640円(税込)
・CIMA HYBRID VIP 8,486,640円(税込)
・CIMA HYBRID 7,946,640円(税込)
上から最上級モデル、ミドルグレード、ベースグレードとなっています。セダンラボのシーマのおすすめグレードは、ズバリ、ベースグレードの「CIMA HYBRID」です!
VIP以上のグレードは、ショーファードリヴン的志向が強く、価格差もほとんどが居住性向上のための装備に充てられています。ベースグレードでも必要な装備はほとんど揃っており、日常で運転する際に不足を感じることはほとんどないでしょう。シーマは自分の手で運転したい、という方には特におすすめのグレードです。
重ねられる地道な改良
2012年から販売され、モデルライフも長くなってきたシーマですが、2017年に一度マイナーチェンジが行われ、特に安全面の装備がより強化されています。
前方車両接近警報は、自分のクルマの2台先までの挙動をモニタリング・判断するインテリジェントFCW(前方衝突予測警報)に進化。バックビューモニターとサイドブラインドモニターは機能統合・性能向上がなされ、移動物検知機能付きインテリジェントアラウンドビューモニターと呼ばれるシステムになりました。
また、後方に対する安全装備も強化。後側方衝突防止支援システム、後側方車両検知警報を標準装備とし、クルマにまつわるあらゆる危険からの回避をサポートします。
ライバルに比べるとコスパの良さが光る!
現在のシーマのライバルといえば、メルセデス・ベンツ・Sクラス、アウディ・A8、BMW・7シリーズ、レクサス・LS、ジャガー・XJなどが挙げられるでしょうか。それらに匹敵する静粛性・快適性を持つシーマですが、機能面での不足はないにもかかわらず、この価格で手に入られることはある意味「バーゲン価格」と言えるでしょう。
かつての初代シーマほどのアクの強さはないにせよ、バランスの取れた大型セダンに乗りたい方にとって、現行シーマは魅力的な選択肢に違いありません。今後のシーマの進化にも期待したいですね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
[ライター/守屋健]