コラム

NAの5リッターV8で423ps!レクサスがかつて販売していた獰猛なスポーツセダン「IS F」の魅力に迫る

みなさん、こんにちは!今回は、レクサスがかつて販売していた弩級スポーツセダン、IS Fについて紹介していきます。その名の通り、レクサス・ISをベースに、メーカーが威信をかけて開発した高性能モデルで、「F」の称号を持つレクサス初めてのクルマです。
そんな「IS F」ですが、2014年に販売を終了してから、次期モデルが登場することなく今に至ります。ハイブリッドには見向きもせず、ただただ大排気量自然吸気エンジンの気持ち良さを追求したスポーツセダン…これからの世の中を考えると、もうこんなクルマが生まれてくることはないのでは?と思えるほど、純粋な「アナログ志向のスーパースポーツセダン」、IS Fの魅力に、今改めて迫ります!

ISをベースに多くの専用品を投入

IS Fがデビューしたのは2007年末のこと。それから2014年まで生産され、約7年の歴史に幕を下ろしました。その間に細かい年次改良は絶え間なく行われたものの、大きなマイナーチェンジやフルモデルチェンジは行われませんでした。先述の通り、後継車は現在も登場せず、一代限りに終わってしまったクルマとなっています。
当時、IS Fのライバルに挙げられていたクルマの筆頭は、BMW M3のセダンモデルでした。BMWモータースポーツ社がメーカーの威信をかけてM3を開発していたのと同様、IS Fにも当時のレクサスの技術がフルに投入されています。
IS Fのベースになったクルマはもちろんレクサス・ISでしたが、手が入れられた場所は非常に幅広く、多岐にわたっています。サーキットのタイムを競うのではなく、あくまでドライビングプレジャーを追求した結果、エンジン、トランスミッション、ブレーキはもちろんのこと、ボディパネルの作り直しによる空力の見直しまで行われています。

現在ではレアな大排気量NA


出典元:ウィキメディア
エンジンから見ていきましょう。搭載されるエンジンは「2UR-GSE」と呼ばれる専用ユニット。自然吸気の5リッターV型8気筒エンジンで、トヨタのスポーツ系エンジンに付けられる「G」の形式名がV8エンジンとして初めて付けられています。エンジンを共同開発したのは、レクサス・LFAのエンジンをも作り上げたヤマハ発動機です。
レクサス・LS600hに搭載されていたエンジンをベースに、吸気・排気のハイリフト化、吸気ポートを高流量仕様に変更、吸気側にチタンバルブを採用、支持剛性向上のためにカムジャーナルをボアセンターに変更、ロッカーアームのラッシュアジャスターを固定ピボットに変更、などの数々の手が加えられ、高回転時のレスポンスや耐久性を大幅に向上。また、サーキット走行を念頭に置いているため、通常のオイルラインとは別に、各バンクのシリンダーヘッド左右両端から強制的にオイルを回収するスカベンジポンプを搭載。ウェットサンプながら、サーキット走行時の油圧を安定させることに成功しています。
参考:セダンの買取専門ページです
これらの改良を施されたエンジンは、最高出力は423ps/6,600rpm、最大トルクは51.5kgm/5,200rpmという驚異的なスペックを発生。0-100km/加速は5.1秒、最高速度は305km/hと発表されましたが、日本仕様は180km/hでリミッターが作動するように設定されていました。
組み合わされるトランスミッションは、LSに搭載されていた8速ATをIS Fに設定し直した専用品。センターコンソールのシフトノブか、パドルシフトでの変速が可能で、そのシフトスピードは0.1秒と、フェラーリなどの世界の名だたるスポーツカーと比べても遜色のない、非常に高レベルな完成度を誇ります。シフトダウン時に瞬間的にエンジンの回転数を上げて、シフト後のエンジン回転数を合わせる「ブリッピングコントロール機能」も搭載していました。

ブレーキはブレンボと共同開発

強力なエンジンを搭載しているとなると、不安になるのが足回り。しかし、IS Fに抜かりはありません。ブレーキは、イタリアの名門ブレーキメーカー・ブレンボと共同で開発。フロントにはスパイラルフィン式の大径ブレーキローターと対向6ポットキャリパーの組み合わせを、リアには対向2ポットのアルミモノブロックキャリパーを採用。強力なストッピングパワーはもとより、サーキットで周回を重ねてもフェードしにくい、耐久性の高いブレーキシステムを構築しています。
タイヤやホイールに関しても、開発チームのこだわりが強く反映されています。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ2もしくはブリヂストン・ポテンザRE050Aの専用開発品。ホイールは、かつてトヨタF1で共に戦っていたBBS社製の専用品で、ブレーキ熱の排出効率を最適化していった結果、前後左右全てで取り付け位置が指定されている、つまり装着場所を変更できないというスペシャルな仕様となっています。このホイールだけで、一体どれくらいのコストがかかっているのでしょうか…。

大幅に迫力を増したエクステリア


出典元:ウィキメディア
エクステリアに関しても、ISをもとに大幅な変更が行われました。というのも、ISのフロントに長く大きなV8エンジンを収めなければならなかった、という理由がひとつ。もうひとつは、300km/hにも達する最高速度を考慮して、空力そのものを見直さなければならなかったからです。
全長×全幅×全高は、4660(+85)×1815(+20)×1415(−15)mm(カッコ内はIS比)で、フロントには口の大きく開いたフロントスポイラー、V8エンジンが収まっていることを示す大きく膨らんだフロントボンネット、フロントフェンダー後ろのエアアウトレット、サイドスポイラー、専用デザインのリアバンパー、そして外観上の大きな識別点であるハの字に4つ並んだマフラーなどが装備されています。結局、ヘッドライト・ドア・トランク・ルーフパネルを除くほぼ全てが作り直された結果、ベースモデルとは比べものにならないほどの迫力あるエクステリアに変貌。見えない部分ではありますが、アンダーカバーも専用に作られ、ダウンフォースの獲得に一役買っています。
インテリアは、他の部分に比べれば変更点は少ないですが、いくつかの大きなポイントが存在します。シートは、座面を10mmほど下げ、サーキット走行時の横Gに対応するためにサイドサポートが大きく張り出したIS F専用スポーツシートを全席に装着。そう、前席ではなく、「全席」に装着しているのがポイントで、後席には2人しか座ることができず、車検証上の定員は4人となっています。
ステアリングは「F」のロゴが入った専用品、スピードメーターも300km/h(のちに330km/hに変更)まで刻まれた専用品となっていて、ベースモデルとの差別化がされています。とはいえ、インテリアに関してはあくまでラグジュアリーな仕立てとなっていて、マークレビンソン社製の高級オーディオシステムなど、標準装備・オプション装備ともに非常に充実した内容となっていました。

積み重ねられた年次改良

2007年に登場して以降の年次改良については、きめ細かい改良が行われました。2009年には専用開発のトルセンLSDを装備し、より強力なトラクションを獲得。レクサスのオープンモデル「IS C」の開発で得られたデータが生かされ、ボディ剛性も向上しています。2010年には、ヘッドランプのデザイン変更、インテリアではシート生地にアルカンターラの設定、メーターデザインの変更、サスペンション周りのセッティング変更が行われたほか、ナビゲーションシステム連動によるサーキットモードが追加され、サーキット限定でスピードリミッターが解除できるようになりました。
2011年には再度サスペンションなど足回りのセッティングを変更。2013年には最後の年次改良が行われ、カーボン製リアスポイラーの採用、シートデザインの変更、ドアトリムやセンターコンソールにアルカンターラを採用などが実施されました。また、特別仕様車「Dynamic Sport Tuning」が発売され、結果的に最後を飾るモデルとなってしまいました。エンジンはフリクションの低減等を行い最高出力は430psに向上、ボディ剛性をさらに高め、専用カーボンフロントスポイラーやリアディフューザーを装着、専用チタンマフラーをも採用するという、非常に贅沢な仕様となっていました。
環境性能第一、スポーツセダンであっても環境性能が無視できなくなりつつあった時代に、専用大排気量自然吸気エンジンをはじめ、贅沢な作り込みを経て登場したレクサス IS F。後継車を作りたくても作れない、もし作れたとしてもハイブリッドもしくはEVになるのは仕方がないことなのかもしれません。歴史の転換点で生まれた、レクサスの異色スポーツセダン。最終モデルの販売終了から5年となった今、あえて一度乗ってみるのはいかがでしょうか?それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
[ライター/守屋健]

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