ホンダCR-Xデルソルはホンダが1983年から1997年まで販売していたライトウェイトスポーツカーCR-Xシリーズの3代目にあたるモデルです。1992年に販売が開始された3代目CR-Xには「デルソル」というサブネームが与えられ初代・2代目のテールゲートを持つ3ドアハッチバックスタイルから方向を大きく変換しハードトップを備えたタルガトップオープンカーへ一新されました。「トランストップ」の名を持つ電動ハードトップルーフがCR-Xデルソルのポイント。斬新で印象的な開閉機構は名前の如くトランスフォームするかのように電動ハードトップが動きルーフを開閉します。CR-Xが打ち出したFFのライトウェイトスポーツは1997年に3代目CR-Xデルソル生産販売終了とともに幕を閉じましたがCR-Xデルソルが残した斬新な電動ハードトップ開閉機構は今でも色褪せることのない魅力的な動作です。
ホンダCR-Xデルソルの特徴
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ホンダCR-Xデルソルは1992年から販売された3代目CR-Xです。サブネームのデルソルはスペイン語で「太陽の」を意味しておりパワーやスピードだけでなく走ることの気持ちよさや楽しさも同時に追求し誰もが快適にオープンエアクルージングを楽しめるクルマとして開発されました。全長3,995mm全幅1,695mm全高1,225mmとコンパクトで5ナンバーに収まるサイズ。エクステリアはファストバッククーペのスタイルとなっていますが、リアガラスは傾斜しているのではなく2シーターになった座席後方に垂直に立てられています。低く伸びやかなプロポーションにクォーターピラーが三角形型に残る2シータークーペに見えるクローズ時のスタイル。オープンになるとBピラーから後方が残りタルガトップに変化します。CR-Xデルソルの最大の特徴はオープンにするときの動作。アルミルーフ製の手動ハードトップもラインナップしていましたが、スチール製ハードトップのルーフ開閉のモーションが非常に個性的なのです。
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キャビンにあるルーフ開閉のスイッチを押すとトランクフードがルーフの高さまで持ち上がりルーフがスライドしてトランクフード下側に収まりトランクフードが元の位置に戻る独特な動き。技術的にも機構的にもかなり複雑なルーフ開閉システムは「トランストップ」と名付けられました。このシステムによりルーフを分割することなく開閉をすることができ、クローズ時にはファストバッククーペとしてのスタイル、オープン時にはタルガトップとしてのスタイルを維持しています。CR-Xデルソルが開発されたのは日本経済バブル絶頂期ということも影響しこのような複雑でコストのかかる機構を開発することができたのでしょう。インテリアの開発コンセプトはオープンスカイ・カフェテラスでインテリアもエクステリアの一部と考えられデザインされています。少し湾曲した造形と安っぽさを感じにくいパネルの質感は長く乗っていても飽きない造りになっており豪華で華やかではないもののドライバーやパッセンジャーが落ち着いて過ごすことができる空間になっています。インテリアで特徴的なのはドライバーから見えるメーター。ゴーグルをモチーフに造られている造形はCR-Xデルソルのインテリアにおけるワンポイントアクセントです。エンジンはホンダの十八番でシビックシリーズにも搭載されていたパワー重視の1.6L直列4気筒VTECエンジンとバランスに優れた1.5L直列4気筒エンジンを設定。後に1.5Lエンジンはラインナップからなくなってしまいますが販売当初は2種類のエンジン展開で販売されていました。組み合わされるトランスミッションはショートストロークシフトの5速MTとロックアップ機構付き4速AT。高剛性軽量モノコックオープンボディにスポーティーなチューニングがされた4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション。
一体成形型バケットシートは適度なホールド感があり軽快なスポーツドライビングを影で支えます。専用ヒーター吹き出し口をセンターコンソールに配置しオープン時でも快適なオープンドライビングを楽しめるよう細かな配慮にも抜けがありません。ユーティリティも高くゴルフバッグを2つ積むことができるトランクスペースを持っています。オープン時にサイドウィンドウを上げておけば風の巻き込みも少ないため程よいペースで走っていても快適性が保持される設計がドライバーとパッセンジャーには嬉しいポイント。スポーツカーのように速く限界域が高いということでもラグジュアリーカブリオレのように豪華な装備が与えられているということではないもののコンパクトなボディにユニークなモーションの電動ハードトップを備え約45秒でクローズからオープンへトランスフォームするCR-Xデルソルは気軽に小気味良いスポーティーなオープンエアドライブを楽しめる魅力的な電動ハードトップオープンカーです。
まだ現存している?!
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非常に個性的な電動ハードトップを持つCR-Xデルソルですが、最終モデルとなる1997年型から現時点(2019年2月)で20年以上、CR-Xデルソル販売開始から考えると25年以上が経過しています。CR-Xデルソルは軽快なスポーツドライビングを楽しめるハッチバッククーペからハードトップオープンカーへ変わったことも影響して販売台数は多くありません。それでも現在中古車市場には数台のCR-Xデルソルが流通しています。中古CR-Xデルソルの価格は30万円から100万円ほど。20年以上経過しているにも関わらず買取価格が付いていることに驚きますが、それほど貴重な存在でユニークなモデルでファンが現在でも存在しているということなのです。ホンダファン、CR-Xファン、デルソルファン、オープンカーファン注目のCR-Xデルソルですが、購入するとしたら1.6L直列4気筒VTECエンジン搭載の「SiR」5速MTモデルがオススメです。ホンダが誇るエンジンメカニズムVTECを活かすことができ運転の楽しさを両立しているのは1.6L VTECエンジンに5速MTが組み合わされているモデル。またCR-Xデルソルを手に入れるのであればの最大の特長とも言える電動ハードトップ開閉機構を装備したモデルがオススメですが、故障や動作不良も多いようなので動作確認といざというときに頼りになるパートナーショップを見つけておくと良いでしょう。
〈オススメまとめ〉
・グレード「SiR」
・直列4気筒1.6Lエンジン
・5速MTモデル
・電動ハードトップ開閉機構
CR-Xデルソルの輝きは失われない
バブル期に販売された3代目CR-Xデルソル。初代と2代目で築き上げてきたライトウェイトスポーツカーファンからすればCR-Xらしさが失われがっかりしたファンもいたことでしょう。しかし、気軽に乗れるコンパクト電動ハードトップオープンカーとしてみればこれほど魅力的なモデルはありません。さらにユニークな電動開閉機構は独自性があり複雑で独特なルーフ開閉をコンパクトなサイズで実現したホンダの発想や技術力の高さはさすがと言えるでしょう。今現在見てもCR-Xデルソルの電動ルーフ開閉動作は斬新で衝撃的なモーション。ホンダが作り出したユニークなライトウェイトハードトップオープンカーがCR-Xデルソルであり今でもその独特な輝きは失われていません。
[ライター/齊藤 優太]