コラム

自動車の未来を切り開く。CO2排出ゼロの燃料電池自動車(FCV)セダン、トヨタ・MIRAI

みなさん、こんにちは!今回は、量産車としては世界初のセダン型燃料電池自動車(FCV)、トヨタ・MIRAIをご紹介します。燃料電池自動車は、通常の電気自動車と並び、優れた環境性能で「次世代の自動車」として注目を集めています。水素の補給場所である「商用水素ステーション」の整備も少しずつですが進んでいて、多くの方が燃料電池自動車の将来性が気になるところではないでしょうか。
ライバルと目されたホンダ・クラリティ フューエルセルが未だに一般発売をせずリース販売にとどまっているあたり、このまま電気自動車(EV)の勢いに押されかねない可能性もありますが、一方で他社もその完成度に驚愕したというトヨタ・MIRAIの魅力に、今改めて迫ります。

誰でも買えるFCV


トヨタ・MIRAIがデビューしたのは2014年末のこと。それから約5年が経過しましたが、2018年に一部改良が行われた以外は、フルモデルチェンジやマイナーチェンジもなく、ほぼデビュー当時のまま生産が続けられています。
リース販売しか行われていないホンダ・クラリティ フューエルセルとは異なり、トヨタ・MIRAIは通常通りの販売が行われています。メーカー希望小売価格(消費税込み)は7,274,880円と高級車の域に達していますが、エコカー減税、グリーン化特例、クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金などをフルに活用すると、約225万円ほど優遇されるのもポイントです。
参考:セダンの買取専門ページです
MIRAIの燃料は水素です。高圧に圧縮された水素は、燃料電池スタック内で酸素と化学反応を起こして電気を作り出します。作り出した電気をコンバーターで650ボルトまで昇圧したのち、モーターを駆動して走行。その際に出るのは水だけ、という非常に優れた環境性能を誇ります。
水素を充填するのに要する時間は3分程度。フル充填の状態から約650kmの航続距離を実現しています。航続距離に関して言えば、ガソリンエンジン車と変わらないレベルに達しており、商用水素ステーションの普及が進めば実用上問題はないでしょう。

安全性の追求も抜かりなし


水素を搭載している、と考えると、やはり気になるのは安全性です。MIRAIでは「水素を漏らさない」「万一漏れても直ちに水素の漏れを検知して水素を止める」「漏れた水素は溜めない」という基本的な考えをもとに、安全対策を徹底。
水素検知器を搭載して漏れがあった際はタンクのメインバルブを遮断する、高圧水素タンクはキャビンの外に配置する、ボディには衝撃吸収フレームを採用して衝突時に備える、高圧水素タンクはガラス繊維強化プラスチックや炭素繊維強化プラスチックなどを使用した強固な3層構造にする、などの対策を実施し、水素で走るクルマとしての安全性を追求しました。ちなみに商用水素ステーションでは、安全対策のために、現在はセルフではなく専任のスタッフによる充填が行われています。
高圧水素タンクは2個に分けて搭載され、一つは後輪車軸上、一つは後席の足元付近に位置しています。また、大型で重量のある燃料電池スタックも前席座席下に配置し、残りの機器をフロントボンネットの中に収めています。この結果、MIRAIは低重心化と優れた前後バランスを実現。コーナリング時でも姿勢変化が少なく、優れた操縦安定性を獲得しています。コントロールしやすいだけでなく、ハンドリングの楽しさや、同乗者の快適性をも向上させている点は特筆すべきでしょう。
MIRAIのサイズは全長4,890mm、全幅1,815mm、全高1,535mmと、かなり大柄な部類に入るミディアムセダンと言えるでしょう。ホイールベースは2,780mmのFFですが、後席付近に位置する高圧水素タンクが室内に張り出している関係で、乗車定員は4名となっています。トランクの容量は361リッターで、ゴルフバッグが3個積み込めますが、高圧水素タンクのレイアウトが原因でトランクスルー構造にはなっていません。

モーターならではのドライビングプレジャー


車両重量1,850kgに対し、モーターの出力は154psと、数字の上では少し物足りないと感じるかもしれませんが、発進時から大きなトルクを生み出すモーター特性のおかげで、キビキビとした走行感覚を備えているのも大きな特徴です。モーターの最大トルク値は335Nmとなっていて、ターボエンジン搭載車にも引けを取りません。燃料電池自動車だからといって、ドライビングプレジャー面でも妥協せず、高いレベルで「運転の楽しさ」を感じる仕上がりになっているあたり、トヨタの良心とこのクルマにかける情熱の大きさがうかがえます。
燃料電池自動車ならではの装備の一つに、水排出ボタンがあります。燃料電池内で生成された水は通常は自動で車外に排出されるものの、立体駐車場などで突然排出が始まったりしないように、強制的に水を捨てるボタンが備わっているのです。ステアリング左側に位置する「H2O」ボタンを押すと、溜まっていた水が排出されます。1キロ走るごとに60cc生成されるので、航続距離いっぱいまで溜め込むと仮定すると、排出量は約40リッターとかなりの量になってしまうので、こうした機能は必須と言えるでしょう。
MIRAIの燃料電池による発電能力は、地震などの災害時にも威力を発揮します。別売りの給電器を使用すれば、トランク内のコンセントの電力を家庭用交流に変換でき、住宅や家電の電源として使用可能。さらに、車内のアクセサリー用コンセントは交流100Vの出力となっているので、家電などをそのまま接続して使用できます。

未来を感じさせるデザイン


エクステリアデザインは、空力性能を突き詰めた独特なスタイリングとなっていますが、近年のプリウスなどに見慣れた目には、あまりエキセントリックには映らないかもしれませんね。サイドビューは、MIRAIが生み出す水、「ウォータードロップ(水滴)」をイメージしていて、全高の高さをあまり感じさせない優れたデザイン。床下は空力性能追求のために全面フルカバーとなっていて、空気抵抗の軽減と静粛性の向上に一役買っています。ホイールは、軽量化と空力性能の向上を狙ったアルミ製の17インチを採用しています。
インテリアは、新世代のクルマらしい新しさと、シンプルな美しさが同居する魅力的な空間となっています。合成皮革製の上質なシートは、ウォームホワイト、ブルーホワイト、ブルーブラックの3色を設定。4人乗りと割り切った設計のおかげで、リアシート周りは広々としていて、ゆとりのある快適な移動を楽しめます。センターコンソールにはカップホルダーが装備され、シートヒーターのコントロールスイッチも備わるなど、ホスピタリティ溢れる設計がポイントのひとつです。
フロントシートは運転席、助手席ともに8ウェイパワーシートを採用。前後スライド、リクライニング、シート上下、座面前端上下の各調整を無段階に電動で行えます。また、腰部を支えるランバーサポートの無段階調整もスイッチ操作で設定でき、乗る人の体格にあったポジションに調整可能。運転席側はメモリー機能が備わっていて、二人分のベストポジションを瞬時に呼び出せるなど、運転席周りの装備も非常に充実しています。

燃料電池自動車、そしてMIRAIに未来はあるのか?


MIRAIは実用性に優れた燃料電池自動車のセダンではありますが、一方でアップデートのスピードはゆっくりとしていて、2018年の一部改良で先進安全装備の充実化が図られたにとどまっています。
世界に目を向ければ、テスラのような新興メーカーからフォルクルワーゲンのような大手、はたまたポルシェのようなスポーツカーメーカーまで、一気に電気自動車(EV)に舵を切ってきたのとは対照的に、国産メーカーはホンダ、日産も含め、燃料電池自動車、電気自動車の進化の速度が少し足踏みしているのが気にかかります。
トヨタにはぜひ、MIRAIを劇的に進化させて、現在整備中の商用水素ステーションが宝の持ち腐れ状態にならないよう、これからも頑張ってほしいですね。それでは、また次回の記事でお逢いしましょう!
[ライター/守屋健]

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