みなさん、こんにちは!今回は、かつてトヨタが生産していた中型の上級セダン、クレスタについて紹介します。いわゆる「マークⅡ3兄弟」の中で最も遅くにデビューし、チェイサーとともにトヨタの中型セダンの中核を担うクルマとして、多くの人々に支持されてきました。
生産を終了してから、2020年で既に19年が経過しており、だんだんとクラシックカーの域に入ろうとしているクレスタ。しかし依然として、中古車市場ではスポーティグレードを中心に200万円近くの値をつけるほどの人気を維持しています。今回は、そんなクレスタの歴史をじっくりと振り返ってみたいと思います。
マークⅡ3兄弟の末弟としてデビュー
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トヨタ・クレスタが登場したのは1980年のこと。既に存在していたマークⅡ、そしてチェイサーに続き、一番遅れてデビューし、クレスタの登場で「マークⅡ3兄弟」は揃い踏みとなりました。質実剛健、王道の長兄マークⅡ、スポーティでやんちゃな次兄チェイサーに対し、よりコンサバティブで豪華、しっかり者の三男クレスタ、というキャラクターで、その高級感あふれるエクステリアとインテリアは、当時の若者の憧れになるとともに、多くの中高年の支持も集めました。
クレスタのマークは兜をイメージしたもので、車名の由来は「紋章の頂に輝く飾り」という意味のスペイン語から取られています。クレスタ登場とタイミングを同じくして、トヨタビスタ店が新設されており、クレスタはトヨタビスタ店の最上級車種という位置付けでした。
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クレスタ・初代モデルのスペックを詳しく見ていきましょう。角目4灯のヘッドライトとスクエアなテールランプ、そしてピラードハードトップといったエクステリアを持つクレスタは、ほとんどの部分をマークⅡと共有しています。駆動方式はFRで、トランスミッションはグレードに合わせて5速MT、4速MT、4速AT、3速ATが用意されました。
サスペンションの形式はフロントがマクファーソンストラット、リアがセミトレーリングアームという、この時代では標準的なもの。全長は4,640mmと長めながら、全幅は5ナンバーサイズの1,690mmに抑えられています。ブレーキに関しては当時から4輪ディスクを採用していました。
クレスタで特徴的なもののひとつに、高級感をアピールしたグレード名が挙げられます。最上級グレード「スーパールーセント」、6気筒エンジン搭載スポーティグレード「スーパーツーリング」、6気筒エンジン普及グレード「スーパーデラックス」、4気筒エンジン搭載上級グレード「スーパーカスタム」、4気筒エンジン普及グレード「カスタム」と、どのグレードも非常にラグジュアリーなネーミングとなっています。
セダンタイプへと進化した2代目
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きっちり4年のモデルサイクルで、クレスタは他の兄弟車とともに1984年にフルモデルチェンジ。2代目モデルへと進化します。先代からの1番の変更点は、ハードトップスタイルをやめ、窓枠付きドアを持つセダンモデルとなった点です。一方で、ハードトップ車並みに全高は低めに設定されており、スマートなスタイルと端正なセダンらしいシルエットを両立しました。このモデルは、当時のハイソカーブームの波に上手く乗り、トヨタ自身が驚くほどのヒットを記録。この経験が、のちの3代目モデルへと繋がっていきます。
先代モデルからは角型4灯ヘッドライトや垂直のフロントグリルを引き継いでおり、内装の装備や仕立てもマークⅡ3兄弟の中では最も豪華な仕様になっています。最上級モデル「スーパールーセント」には、積極的に当時の最新電子技術が取り入れられていて、電子制御サスペンション(TEMS)や2モードプログレッシブ・パワーステアリングなどが採用されています。
エンジンは2リッター直列6気筒DOHCターボ、2リッター直列6気筒DOHC、1.8リッター直列4気筒、2.4リッターディーゼルターボ、2リッター自然吸気ディーゼルなどがラインナップ。トランスミッションは、2ウェイOD付4速ATと電子制御4速ATのECT-S、5速MTが設定されていました。
大ヒットとなった3代目モデル
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1988年から1992年まで生産されていた3代目クレスタは、クレスタの5代21年にわたる歴史の中で最も大きな成功を収めたモデルです。世間がバブル経済に沸く中、クレスタ以外のマークⅡ、チェイサーも売れに売れました。マークⅡ3兄弟の各車は自動車教習仕様もラインナップされていて、この代のモデルも多数導入されましたが、教習車仕様が生産されたのはこの3代目モデルが最後となっています。
低く伸びやかなフォルムの4ドアセダン、という基本的な構成は変わらないものの、全体的に丸みを帯びたエクステリアデザインとなり、先代以上の豪華な内装装備やエレクトロニクス技術が投入されています。
エンジンは3代目モデルで、ついに全車DOHC化されました。エンジンの設定は非常に多く、2リッター直列6気筒の自然吸気とツインターボとスーパーチャージャー、3リッター直列6気筒、2.5リッター直列6気筒の自然吸気とシングルターボ、1.8リッターの直列4気筒と、2.4リッターと2.2リッターのディーゼル、さらにLPG仕様が時期とモデルによって用意されていました。
注目すべきなのは、1990年のマイナーチェンジ後に搭載された2.5リッターツインターボで、採用グレードの「GTツインターボ」の最高出力はついに280psに到達。国内最速のセダンの一台として、名を馳せることになります。走り好きの若者がカスタムカーベースとして購入し始めたのも、この代以降の特徴と言えるでしょう。
最速セダンの称号「ツアラーV」
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4代目クレスタは1992年にデビュー。この代でクレスタはボディサイズを拡大し、室内の居住性を大きく向上させた一方、全グレードが3ナンバー枠となりました。スポーティグレードの「GTツインターボ」は「ツアラー」に名称が変更され、先代から引き継がれる2.5リッターツインターボ搭載車は「ツアラーV」、自然吸気の2.5リッターモデルは「ツアラーS」を名乗りました。
「ツアラーV」、つまりターボエンジンモデルにマニュアルトランスミッションが設定されるのは、クレスタではこの代のモデルが最後となり、そのため現在でも程度の良い中古車が非常に高値を付ける場合があります。特にドリフト愛好家にとっては、大型のハイパワーFRセダンの選択肢が少なくなっている今、未だに探している人の多い「隠れた名車」となっています。
また、この代の特徴といえば、クレスタの歴史の中で初めて、4輪駆動モデルが設定されたことが挙げられます。1993年に追加された「スーパールーセントGフォー」と「スーパールーセントフォー」がそれに当たり、トランスミッションの設定はオートマチックのみでしたが、どうしても4輪駆動モデルが欲しい!という人へ貴重な選択肢を提供していたと言えるでしょう。
フォーマルなイメージの5代目モデル
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クレスタの最終モデルは、ここで紹介する5代目モデルです。1996年から2001年にかけて生産され、この代のモデルをもって、クレスタは21年に渡る歴史に幕を閉じました。
マークⅡ3兄弟は、この代でエクステリアデザインや装備について明確な差別化を図っており、クレスタにはこれまで以上にフォーマルなイメージでまとめられています。全高は同時期のマークⅡに比べて20mm高められており、室内の居住性を向上させました。他にも、端正なフロントグリル、尻下がりのリアエンドなどで、セダンらしい落ち着きのあるエクステリアを表現しています。
スポーティグレードは「ツアラー」から「ルラーン」に変更、ターボエンジンは先代と変わらず280psを発生するものの、トランスミッションは4速ATのみとなっています。走り好きの間では、マニュアルトランスミッションへの載せ替えの頻繁に行われています。
クレスタの販売終了後、後継車として「ヴェロッサ」が発売されましたが、あまりに先鋭的なボディデザインはクレスタのオーナー層の好みに合致せず、結局ヴェロッサは販売不振で早々に生産を終了してしまいます。保守的なセダン、というイメージの最後の担い手、トヨタ・クレスタ。走り好きにも愛される落ち着いたデザインのセダンとして、これからも長く愛されていくことでしょう。
[ライター/守屋健]