1991年東京モーターショーでお披露目されたZ32フェアレディZコンバーチブルコンセプト。このコンセプトモデルが大きな反響を呼び1992年に市販化されたモデルがフェアレディZコンバーチブルです。ベースとなったのはもちろんクーペのZ32フェアレディZ。手動開閉式ソフトトップルーフを備え豪華装備が与えられたTバールーフオープンカーへ派生したフェアレディZコンバーチブル。今回は反響から生まれたZ32フェアレディZコンバーチブルについて詳しく掘り下げていきましょう。
Z32フェアレディZコンバーチブル
1991年、幕張に会場を移して2回目の第29回東京モーターショーで発表されたフェアレディZコンバーチブルはクーペのZ32フェアレディZをベースにルーフを取り払いソフトトップを設けたオープンカー。Z32フェアレディZの特徴でもある低く伸びやかなボンネットから続くボディラインが強調されたスタイルはモーターショーで反響が大きく市販化の要望が高まりました。翌年1992年、Z32フェアレディZコンバーチブルの販売が開始されました。全長4,310mm全幅1,790mm全高1,255mmと車高は低いものの扱いやすいサイズのボディ。エンジンはV6 3.0L自然吸気のみ、最高出力230PS最大トルク27.8kgmを発生させ後輪を駆動させます。モノコックボディをオープン化したことによりフロントクロスンバー、リアクロスンバー、リアセンタークロスンバー、ボックス構造トランクなど各部ボディ剛性の強化がされています。部分によってはベースモデルと比較して倍以上の厚さのパネルを使うなどボディ剛性強化に抜かりはありません。
オープン化に伴う剛性強化をしても重量増加をプラス50kgで抑えられたことは素晴らしいことです。スタイルはZ32フェアレディZの基本的なスタイルはそのままにルーフ部分を取り払いソフトトップに変更、Bピラーが残るTバールーフコンバーチブル仕様。手動開閉ソフトトップは室内にあるロックを外しトランクリッド上部を開けてしまい込む格納方法。ルーフを開けたときのスタイルは低いボンネットやショルダーラインが強調され非常に伸びやかなシルエット。Bピラーが残りますが取って付けたような違和感はなく自然なスタイルを維持しています。装備はコンバーチブルならではの豪華な装備が与えられ、エクステリアカラーに応じてオフホワイトもしくはオフブラックのレザーシートが組み合わされます。ステアリングにはSRSエアバッグ付きレザーステアリングを装備。
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オープンモデルで気になる風の巻き込み対策はデフレクターを装備することによって風の巻き込みが抑えられ、肩までサポートがあるシートに身を収めれば快適なオープンエアグランドツーリングを楽しむことができます。大人2人が座れるシートと2人分の荷物を積載できるトランクスペースを持っているところはフェアレディZの持ち味であるグランドツーリング要素を感じることができるポイント。デビュー当初はモノグレードでのリリースでしたがデビュー後は毎年のように改良が行われ、レザーシートをオプションにするなど廉価版グレードの追加や新色のボディカラーを追加などがされましたが1998年にカタログから消え生産を終了しました。おおよそ6年にわたり販売されたZ32フェアレディZコンバーチブルは販売台数こそ多くないものの後のフェアレディZロードスターへ続くフェアレディZオープンカーの歴史を切り開いた記念すべきモデルです。
希少なオープンZに乗りたい
Tバールーフを備えた特別なZ32フェアレディZコンバーチブルの中古車は現在(2019年2月時点)で数台しか出回っていません。販売終了から20年以上が経過し個体数は減る一方です。ソフトトップTバールーフフェアレディZコンバーチブルに乗りたいのであれば今がラストチャンスといえるでしょう。一般的に流通している個体を見てみると走行距離が10万km未満の個体が多く修復歴がない車両がほとんどです。状態が良いものは「要相談」となっています。一般的なZ32フェアレディZコンバーチブルの価格は50万円~120万円と手が届きやすい本体価格にまで下がってはきているものの20年以上経過した車両ということを考えると高価格を維持しています。
残りわずかなフェアレディZコンバーチブルに乗りたいのであれば低走行でソフトトップの状態が良い車両がオススメです。特にソフトトップの状態は要チェックです。出先での雨などで雨漏りをしてしまうとせっかくのドライブが台無しになってしまう可能性があります。前オーナー所有時の保存状態(屋根付き駐車場など)が良ければソフトトップの経年劣化はさほどないかもしれませんがやはり時間の経過とともに劣化は避けられません。よってソフトトップのひび割れや切れなどはしっかりとチェックすることを忘れないようにしてください。
〈オススメまとめ〉
・低走行車両
・ソフトトップの状態
コンバーチブルからロードスターへ
Z32フェアレディZコンバーチブルは東京モーターショーでの反響から市販されました。モーターショーの発表からわずか1年という短い期間で市販されたことからも急遽市販されたとの見方があるフェアレディZコンバーチブル。ハードトップクーペを貫いてきたフェアレディZの歴史においてオープン化は想定外の出来事だったのかもしれません。Z32フェアレディZコンバーチブルの後継にあたるZ33フェアレディZのオープンバージョンはフェアレディZロードスターという車種名で販売されました。この事からもZ32フェアレディZコンバーチブルはZ32フェアレディZ開発段階でオープンにすることを想定していなかったと推測することができます。
Z33フェアレディZロードスターでは車種名がコンバーチブルからロードスターに変更されただけでなくフルオープンになる構造と電動格納式ソフトトップを採用しています。車種名の変更、フルオープン化、電動開閉機構などこれらの要素からZ33フェアレディZではオープンボディにすることも想定して開発されていると考えられます。さらにZ33フェアレディZロードスターの後継Z34フェアレディZロードスターは開発段階からオープンボディであるロードスターを視野に入れた開発がされています。市販化の声から急遽オープンボディの開発を迫られたZ32フェアレディZコンバーチブルは急な開発の影響からかTバールーフの手動ソフトトップが採用されています。
豪華な装備とスポーツグランドツーリングカーの要素を持ち合わせていたZ32フェアレディZコンバーチブルがあったからこそ後継のZ33フェアレディZやZ34フェアレディZでロードスターの設定がされているといっても過言ではないでしょう。現在(2019年2月)では日本市場においてフェアレディZロードスターの販売はされていません。しかし日本以外の市場ではフェアレディZロードスターの販売は継続しています。日本の四季折々の気候を最大限に楽しむことができるオープンカー。
スポーツカーの要素と快適なグランドツーリング性の持ち合わせたフェアレディZ。この2つの要素が組み合わさったモデルがフェアレディZコンバーチブルでありフェアレディZロードスターなのです。これほど魅力的な国産オープンスポーツグランドツーリングカーが日本市場で販売されていないのは非常に残念です。オープンカーの良さ、スポーツグランドツーリングカーの快適性は乗った人にしかわからない魅力があります。この魅力を持っているフェアレディZのオープンカーを絶やさず作り続け楽しさを伝え続けてほしいですね。
[ライター/齊藤 優太]