さらに高められた完成度。熟成の進んだマツダのフラッグシップセダン、アテンザのおすすめグレードとは?
今回は、マツダの誇るフラッグシップセダン、アテンザのおすすめグレードをご紹介します。細かい年次改良が続けられ進化を続けてきた現行アテンザですが、2018年5月に「大幅改良」が行われ、高い完成度をさらに引き上げています。モデル末期とも噂される現行アテンザ、まさに完熟の状態にあると言っても過言ではない、このクルマの魅力に改めて迫ります。
マツダのフラッグシップモデル、アテンザ
アテンザは日本国外向けでは「マツダ6」と呼ばれていて、ヨーロッパではDセグメントにカテゴライズされます。初代モデルが発表されたのは2002年で、「カペラ」の実質的な後継車として登場しました。ハッチバックモデルもラインナップされていて、RX7、ロードスターに次ぐ「新たな5ドアスポーツカー」という触れ込みで、その優れた走行性能が高く評価されました。
2代目モデルの登場は2008年。初代モデルに引き続き、セダン、スポーツと呼ばれるハッチバック、スポーツワゴンの3タイプがラインナップされていました。現行型である3代目は、2012年に発売が開始されました。この代でハッチバックモデルがなくなり、セダンとワゴン、2種類のボディタイプのみとなります。
現行型である3代目アテンザは、マツダの新しいデザインテーマである「魂動(こどう)- Soul of Motion」と、新世代技術である「SKYACTV TECHNOLOGY」を全面的に採用したフラッグシップモデルとして開発されました。流れるようなボディラインを引き立てるための特別色「ソウルレッドプレミアムメタリック」もオプションで設定され、マツダのトレードマークカラーとして知られるようになります。
3代目アテンザはデザイン面でも、走行性能面でも極めて高い評価を獲得。「2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤー」でデザインや走行性能に優れたクルマに贈られる「エモーショナル部門賞」を獲得したほか、「2014年次RCJカーオブザイヤー」を受賞するなど、国内外で数々の賞を獲得しています。
参考:セダンの買取専門ページです
また、年次改良が細かく行われていることも特徴のひとつで、毎年のように機能面、内外装デザイン面で改善が加えられてきました。現行型が登場して既に6年が経過していますが、走行性能でも第一線級の能力を維持し続け、またデザイン面でも新鮮さを失っていないのは、マツダのフラッグシップモデルにかける情熱がただならぬことを表しているといえるでしょう。
クリーンディーゼルとガソリン、どのエンジンを選ぶ?
現行アテンザで選べるエンジンは3種類。2.2リッターのディーゼルと、2リッターのガソリン、2.5リッターのガソリンエンジンです。どのエンジンも2018年5月の大幅改良時に手を加えられ、最高出力、最大トルクともに向上しています。
20S、20S PROACTIVEの2グレードに搭載される、2リッターガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」の最高出力は156PS/6,000rpm、最大トルクは199Nm/4,000rpmとなっています。ピストン形状を新しくすることで、さらなる高効率化を実現。中低速域のトルクを改善し、実用燃費も向上させています。
25S L Packageのみに搭載される2.5リッターガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」のスペックは最高出力190PS/6,000rpm、最大トルク252Nm/4,000rpm。ディーゼルには及ばないものの、十分なトルクの太さを実現し、どの速度域でも軽快に加速することが可能です。定常走行時に4気筒のうち2気筒を停止させる新しいシステム「気筒休止」により、実用燃費をさらに向上させています。「気筒休止」から連想されるような、切り替わる際のギクシャクさを感じさせない、極めて高い完成度を誇るシステムとなっています。
XD、XD PROACTIVE、XD L Packageに搭載されるのは、2.2リッターのクリーンディーゼルである「SKYACTIV-D 2.2」で、2018年の大幅改良でさらに最高出力、最大トルクを向上させています。スペックは最高出力190PS/4,500rpm、最大トルク450Nm/2,000rpmとなっていて、4〜5リッターの自然吸気ガソリンエンジン並みのトルクを持っていることが最大の特徴です。また、「ナチュラル・サウンド・スムーザー」や「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」などの
独自技術により、ノック音を低減させ、今まで以上に静粛性を向上させています。
もうひとつ、アテンザのクリーンディーゼルに関する重要なポイントは、ガソリンモデルがFF、ATしか選べないのに対し、クリーンディーゼルモデルはXD、XD PROACTIVE、XD L Package、すべてのグレードでFFと4WD、ATと6MTが選択できる、ということです。そうしたことからも、マツダがアテンザの主力をクリーンディーゼルと考えていることがわかります。単純にエンジンの種類による燃費や出力の違いだけで選ぶのではなく、自分に合った駆動方式やミッションを選ぶということも念頭に置いてエンジンを選ぶとよいかもしれません。
ズバリ、アテンザのおすすめグレードは?
セダンラボが決めるアテンザのおすすめグレードは、ズバリ「XD PROACTIVE FF 6MT」です。その理由を説明する前に、前提条件を書いておきましょう。「最終型と言われる現行アテンザを最も楽しく、長く乗れるグレードを選ぶ」です。では、選んだ理由について詳しく解説していきます。
理由その1「クリーンディーゼルの怒涛のトルクは癖になる」
ガソリンエンジンモデルの軽やかな吹け上がりも楽しいですが、クリーンディーゼルの怒涛のトルクを味わってしまうと、なかなか後には戻れません。特に、高速道路の移動や山道での走行が多い方にはおすすめです。もともとクリーンディーゼルエンジンは高回転まで回らず、低回転域のトルクが太いので、発進時や高速巡航時にエンジンの「一番美味しい領域」を使うことができる、というのもメリットですね。
理由その2「17インチホイール仕様の方が、挙動、乗り心地ともに良好」
最上級グレードである「L Package」は、19インチのホイールに45扁平のタイヤを組み合わせていて、そうした見た目が好きな人は良いものの、実際の走りは17インチ仕様の中間グレード、下位グレードのモデルに劣っている、と言わざるを得ません。「PROACTIVE」や素のグレードに組み合わせられるタイヤは55扁平で、しかしこのモデルのために専用チューニングされたブリヂストン製となっており、極めてスムーズな乗り心地と素直なハンドリングを両立させています。長い距離を走れば走るほど、そのありがたみを味わうことができるでしょう。
理由その3「安全運転を長く続けたいのであれば、先進安全装備は必須」
アテンザの「PROACTIVE」以上のグレードであれば、アダプティブLEDヘッドライトやレーンキープ・アシスト・システム、レーダー・クルーズ・コントロールなど、先進安全装備が充実。事故のリスクを減らして、長く運転を楽しみたいのであれば、これらの装備は必須といえるでしょう。「L Package」の豪華で繊細なレザー内装は魅力的ですが、毎日ガンガン乗るのであれば、手入れが簡単な「PROACTIVE」や素のグレードに備わるクロス(布)シートの方がベターです。レザーよりも柔らかく体を包んでくれるような感覚で、座り心地も良く、疲れにくいです。
理由その4「ディーゼルエンジンはマニュアルが楽しい」
トルクの大きいディーゼルエンジンは、ぜひマニュアルトランスミッションで楽しみましょう。ATに比べると軽量ですし、太いトルクのおかげで発進に気を使うこともありません。低回転からトルクが豊富にあるので、どの回転数からでもグイグイ加速。のんびりゆっくり、噛みしめるようにシフトすることもできますし、少しやる気になって山道を積極的に走ることもできます。面倒な「ドライビングモード選択スイッチ」などの操作をすることなく、その場の気分で「自分の中で」切り替えて運転することができるのは、MTだけの特権です。どうしても4WDが必要、という場合以外は、軽量で軽快な操縦性を持ち、燃費も良好なFFをおすすめします。
2018年5月に行われた大幅改良、その中身は?
2018年5月の大幅改良では、控えめな外観の変更に対して、インテリアは劇的に変化。各部のデザインもより高級感を感じられるものにリファインされました。細かいところで言えばセンターディスプレイがサイズアップし、ヘッドアップディスプレイが表示内容が整理されてさらに見やすくなっています。また、最上級グレード「L Package」のみに設定される世界初採用の新素材「ウルトラスエード ヌー」の上質な質感は、まさにフラッグシップモデルにふさわしいものとなっています。
エンジンについても内部に手を入れ、出力と燃費を向上させたほか、安全面では夜間対応の歩行者認知機能付き自動ブレーキ、360度モニター、0km/hまでの渋滞に対応した追従型クルーズコントロールなど、隙のない改良が細かく重ねられています。
最終型?熟成の極みにあるアテンザに今乗ろう!
現行型も登場から6年が経ちますが、細かく改良を積み重ねてきたおかげで今も全く新鮮さを失っていないアテンザ。そんないわゆる「モデル末期」のクルマに、コストをかけて今回のような文字通り「大幅な改良」を施すあたり、マツダのこのモデルにかける意気込みが感じられます。
クルマの各所に、今後マツダ車が順次採用していていく新技術を先行して採用したとされるアテンザ。次期モデルではFRになる、直列6気筒エンジンを採用する、などの噂がありますが、噂はあくまで噂。マツダの考えるFFベースのフラッグシップセダンの最終進化形態を楽しむのであれば、今がチャンスです。完成度と満足度の高い仕上がりとなっている現行アテンザは、今後じっくりと長く付き合っていくには最適のセダンといえるでしょう。
[ライター/守屋健]