コラム

スバルとGMがタッグを組んで生まれたミニバン「トラヴィック」は隠れた名車!

それでは今週もさっそく「おすすめミニバンのおすすめグレード」に関する研究を進めてまいりましょう。今週のお題は、生産終了から15年がたった今もなお一部のユーザーに深く愛されているスバルの名作ミニバン「トラヴィック」です。

ドイツ車である「オペル ザフィーラ」のOEM版


スバル トラヴィックは2001年8月に発売となった7人乗りのコンパクトミニバンで、車名は英語のTravel(旅行する)とQuick(機敏な)を組み合わせた形の造語です。
そしてトラヴィックはスバルが独自に開発したモデルではなく、ドイツ車である「オペル ザフィーラ」のOEM版でした。
1999年12月に富士重工業(当時)とゼネラルモーターズ(GM)は戦略的提携を結び、トラヴィックは、その提携により生まれた初のモデルだったということです。
GM傘下だったオペルから基本コンポーネンツの供給を受け、オペル ザフィーラでは1.8Lとなるエンジンを2.2Lに拡大。そして国内仕様向けにチューンした足まわりを採用することで「スバルらしい“走りの良さ”を追求」(当時のプレスリリースより)したのが、スバル トラヴィックというミニバンだったのです。
2198ccの直4 DOHC16バルブエンジンはオールアルミ製で、最高出力147psと最大トルク20.7kg-mを発生。2200rpmから5300rpmまでの回転域で最大トルクの90%以上を出すという、実用重視型のユニットでした。
組み合わされるトランスミッションは電子制御の4速ATで、走行状況に応じて「エコノミー」「スポーツ」「スノー」の3モードを選ぶことが可能。停車時にブレーキペダルを踏むと自動的にギアがニュートラルに入り、燃費と静粛性を向上させるというオペル自慢の「Nコントロール機構」も備わっていました。ちなみにスバル車とはいえ、トラヴィックの駆動方式はFFのみです。

シートアレンジもなかなか多彩


取り回しのいい小ぶりなボディに多種多様なアレンジが可能となる7人乗りシートを載せた優れたパッケージングは、ザフィーラゆずり。ボディサイズは全長4315mm×全幅1740mm×全高1675mmで、最小回転半径は5.3m。当時のミニバンとしてはなかなか小回りが利く仕様だといえます。
ザフィーラでは「フレックス7」と呼ばれたシート機構は、トラヴィックでは「マルチシーティングシステム」として継承。2人掛けの3列目は取り外すことなく床下に収納可能で、2列目は前後に300mmスライドさせることができます。また荷物が多い場合は2列目を畳み、1列目のシートバックに寄せてしまうことで最大1705Lのカーゴスペースが確保されます。

ダンパーのセッティングは日本市場向けに調整


「走りのスバル」を特徴づけるべく採用されたサスペンションは、前輪ストラットの後輪トーションビーム式トレーリングアームと、形式は同じものの、ダンパーの設定をトラヴィック専用としたことで、乗り心地や操縦安定性、直進安定性の向上が図られました。
さらにスポーティなグレードである「Sパッケージ」には、ダンパーの減衰力を高めた専用スポーツサスペンションを付与。そこに、ベースグレードより1インチ大きな16インチアルミホイールが組み合わせられていました。

2002年10月に最初の一部改良を実施


2002年10月には一部改良が実施され、2.2L直4エンジンのコントロールユニットの仕様を変更。これによりカタログ燃費がリッターあたり0.6km向上し、10.6km/L(10・15モード)となりました。
またフロントワイパーに新型のモジュールユニットを採用することで、悪条件化での払拭性能を向上。さらにはアクティブヘッドレストとサイドエアバッグのメーカーオプションを拡大設定したのもこのタイミングです。
グレードの面では上級「SLパッケージ」を追加設定。これはエアロパーツやスポーツサスペンションを奢った「Sパッケージ」をベースに、ツートーンスポーツタイプの本革巻きステアリングホイールやサイドサポート付きフロントスポーティシート、シートヒーター付き本革シート&本革ドアトリム(メーカーオプション)などを装備したグレードです。
参考:ミニバン/ワゴン車/ワンボックスの買取専門ページです

2003年7月には1.8L版も追加設定


そして2003年7月にはさらなる一部改良を実施しました。2列目シートは3分割(4:2:4)の可倒式となり、「マルチシーティングシステム」の種類も増加。さらに中央席3点式シートベルトとリクライニング機能、ISO-FIXチャイルドシート対応左右席が、新アイテムとして備わりました。
外観はフロントグリルとリアコンビネーションランプに新デザインを採用し上級グレードの「S」と「SL」パッケージには新デザインの16インチアルミホイールを付与。インテリアでは明るいライトグレーの内装(SLにはオプション)や、ホワイトメーター(Aパッケージを除く)も追加されています。
さらに、このタイミングで追加されたエントリーグレード「Aパッケージ」は1.8Lの直4DOHCエンジン、つまりザフィーラと同じエンジンを搭載。ただし最高出力はザフィーラより10psアップの125psです。

走りは最高だが「大衆ウケ」はしなかった


そんなこんなの商品開発を続けてきたスバル トラヴィックですが、一部の愛好家には欧州車ゆずりのシュアな走りっぷりがとてつもなくウケたものの、残念ながら一般大衆の大きな支持を得るには至りませんでした。
そのためスバル トラヴィックは一部のファンから惜しまれながらも2004年末に生産終了となり、在庫分も2005年3月には終了。その短い現役生活を終えたのでした。
ということで、これからスバル トラヴィックという名作ミニバンを手に入れたい場合は、当然ながら「中古車」を探すほかありません。

今や中古車は激少。スムーズに探すのはちょっと難しい


しかしながらトラヴィックの中古車流通量はもはや激少で、2019年5月半ば現在、カーセンサーnetでの掲載数は全国でわずか7台です。
相場は20万~80万円といったところですが、比較的集中しているのは「30万円前後」といったところでしょうか。
素晴らしい乗り味の傑作ミニバンであることは間違いないのですが、もはや流通量が少なく、そして年式的にもいささか古いということで、よほど思い入れがある人以外はあえて手を出すべき存在ではないのかもしれません。
それでも、車好きとしてはやはりちょっとだけ気になって仕方ない車。それが、2019年におけるスバル トラヴィックだと言えるでしょう。
多少なりともミニバン選びのご参考になったならば幸いです。それではまた来週!
[ライター/伊達軍曹]

車の売却・査定は買取専門店にお任せください

創業20年以上の買取専門店だから、お車のセールスポイントを熟知!細かな装備やカスタム内容もしっかり高額査定が可能です。お車の買取相場をリアルタイムで把握しているので適正価格で買取させていただきます。

愛車の相場と査定の
お申し込みはこちら!

販売開始から50年を迎えた歴史あるクルマ。日産が誇るスポーツカーのレアモデルである「フェアレディZロードスター」をご紹介!前のページ

トヨタがダイハツと共同開発した小型SUV「トヨタ ラッシュ」とともに過ごす毎日は、けっこうステキかもしれない次のページ

この記事を書いた人
ユーズトカーラボ 編集部
ユーズトカーラボ 編集部

ユーズドカーラボマガジンは国内最大級の中古車専門メディアです。自動車ライターによる中古車に関するコラムや、相場などの詳細情報まで網羅しています。

関連記事

  1. コラム

    【2022年版】ランクル200の圧倒的なリセールバリューの秘訣を解説

    ランドクルーザーは、日本国内にとどまらず、世界中で高い人気を誇る本格派…

  2. コラム

    BMW 318iのユーザーレポート

    BMW 318iに実際に乗っている方から協力いただいたアンケー…

  3. コラム

    SUBARUを倒産の危機から救った偉大なる功績。レガシィセダン 起死回生の期待をかけて生まれた初代レ…

    1989年、当時経営上の厳しい局面に立たされていた富士重工業が、起死回…

  4. コラム

    種類が充実!BMW X3のカスタマイズをご紹介

    BMW X3のカスタマイズは多岐にわたります。エクステリアのカスタマイ…

  5. コラム

    代表的なSUVのオープンカーはこれ!日本では今後オープンモデルの人気はどうなるのか

    誰もが憧れるオープンカー、乗ってみたいとは思うけどスポーツカーやクーペ…

  6. コラム

    キャンパー必見!BMW X3にヒッチメンバーは取り付けられるの?

    今回はBMW X3のヒッチメンバーについてご紹介します。ヒッチメンバー…

  1. コラム

    アルファードだけじゃない?リセールバリューの高いミニバン
  2. コラム

    BMW乗り換え体験談。子供が生まれた後にBMWを購入しました
  3. コラム

    BMW X5にオーバーフェンダーをつけるには?その購入方法と注意点
  4. コラム

    国産で初めてフルオープンタイプ電動メタルルーフが備え付けられていたのがこの「日産…
  5. コラム

    オンロードにおける欧州仕込みのシュアな走りが高く評価されていた日産のCセグメント…
PAGE TOP