去る10月23日から11月4日にかけて開催された東京モーターショー2019のダイハツブースにて、「新型コンパクトSUV」という身も蓋もない車名でひっそりと展示されていた一台のSUV。
「……なんだコレは?」と気になっていた筆者だったが、ご存じのとおり「新型コンパクトSUV」は「ダイハツ ロッキー」へと名前を変えて11月5日、正式に発売された。なお、これまたご承知のとおりかと思うが、新型ロッキーは「トヨタ ライズ」との車名でトヨタにOEM供給され、こちらも同じく11月5日に発売となっている。
OEM供給版のトヨタ ライズはさておき、今回は「ダイハツ ロッキー」について少々考えてみたい。なぜならば、モーターショーのダイハツブースに地味な名前で展示されていたときから、実はこのSUVのことが少々気に入っていたからだ。
や、「すっごく気に入ってる!」というわけではないのだが、あの「程よく地味な感じ」が妙に筆者の琴線に触れるのである。
小回りが利くDNGA採用の都市向け小型SUV
まずは「ロッキー」の概要について簡単に触れておこう。
ロッキーは、今年7月に発売されたタントに続く「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」の第2弾商品で、コンセプトは「アクティブ・ユースフル・コンパクト」。……取ってつけたようなカタカナコンセプトだが、まあ言いたいことはわからんでもない。「レジャーなどのためにSUVが欲しいけど、大きなクルマは苦手」というアクティブユーザーに向けて、レジャーから買い物まで幅広いシーンで使える手頃なSUVとして開発されたのだそうだ。
ボディサイズは全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mmということで、最近の車としてはかなり小柄な部類に入る。だが実際に目で見るロッキーは(筆者が見たときはまだ「新型コンパクトSUV」だったが)、この数字以上に大きく感じられる。
またDNGAの新プラットフォームにより、最小回転半径は16インチタイヤ装着モデルで4.9m、17インチタイヤ装着モデルでも5.0mと、かなり小まわりが利く。このあたりも、本格的な山道ではなく主に都市部で買い物や通勤等に使われることが多いであろうロッキーの美点だ。
エンジンは1.5L相当の力を持つ1L直3ターボ
パワートユニットは、1.5L相当の性能を発揮する直列3気筒DOHC 1.0リッターターボ「1KR-VET」で、そのスペックは最高出力72kW(98ps)/6000rpm、最大トルク140Nm(14.3kg-m)/2400~4000rpm。カタログ燃費はWLTCモード燃費が18.6km/Lで、JC08モード燃費が23.4km/L。「なかなかのモノ」と言える水準だろう。トランスミッションはワイドレシオ化されたD-CVTだ。
駆動方式は2WDと4WDの2種類で、4WDシステムは電子制御式カップリング機能を用いた「ダイナミックトルクコントロール4WD」。走行状態や路面状況を検知し、ECUで前後輪に100:0~50:50までシームレスにトルク配分を行なうというもののだ。
グレードは大きく分けて「L」「X」「G」「Premium」の4種類があり、価格は最廉価グレードである「L」の2WDが170万5000円、最上級グレード「Premium」の4WDが242万2200円。そして中間グレードである「X」と「G」はその間に入るというプライシングになっている。
ちなみにロッキーは運転支援システムも充実していて、自動緊急ブレーキや車線逸脱抑制制御、前後誤発進抑制制御などからなる「スマートアシスト」は全車に標準装備。上級グレードの「G」「プレミアム」には、全車速対応型アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストなどからなる「スマートアシストプラス」も搭載され、こちらに含まれる車両後側方警戒機能「ブラインドスポットモニター」「リアクロストラフィックアラート」は、このモデルで初採用となった機能だ。
「ちょっと微妙なところ」が逆に好ましい!
まだ試乗はしていないため正確なところは不明だが、以上のスペック面から考える限りでは、新型ダイハツ ロッキーの走りは「けっこういい」と推測される。また話が長くなるため端折ってしまったが、居住性や積載性などもなかなか優秀であるらしい。
そのうえで、筆者がダイハツ ロッキーのことを「いいかもしれないな」と思うのは、「全体として微妙にビミョーである」という点だ。
まずは「ダイハツ」というブランド自体が微妙である。いや、軽自動車メーカーとしてのダイハツは最先端を行く素晴らしいブランドだと思っているが、「普通車メーカー」としてのダイハツが、イメージ的に「悪くはないが、なんかビミョー」であることについては論をまたないはずだ。特に「ダイハツのSUV」というのは、正直どうかと思う。
だが逆に「そこがいい!」とも強く思うのである。
SUVというカテゴリーがこれだけメジャーになってくると、普通のトヨタやら日産やらといったメーカーの、普通にちょっといい感じのSUVが登場しても「ああ、またか……」という感じで食傷気味となってしまうのが、筆者のような自動車変態である。
簡単に言えばそれは「マイナー志向」であり、世の中は普通にメジャー志向の人のほうが圧倒的に多いと思うわけだが、一部のマイナー志向なご同輩であれば、筆者が言っていることのニュアンスはある程度ご理解していただけると信じている
つまり「すべてがものすごくカッコいいSUV」なら話は別だが、「中途半端にちょっっとカッコいいSUV」などもう要らないのだ、自動車変態的には。
これからSUVを買う人にとっては要注目の存在
そこへいくとダイハツ ロッキーは、前述のとおり「ブランド」がそもそもやや微妙であり、「ロッキー」という車名も微妙にダサい感じで素敵だ。この車名は1990年にダイハツから発売されたオフロードモデルである初代「ロッキー」を復活させたものだが、とにかくロッキー! わかりやすくて、男くさくていいじゃないか!
デザインも、全体としてまあまあカッコいいのだが、どこか「フランスのDS4クロスバックになろうとして、でもなりきれなかった」みたいなところ(?)も個人的には若干感じられ、そこにも好感を抱いている。
スマートアシストやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)等々に加えてブラインドスポットモニターとリアクロストラフィックアラートまで付いている最上級グレード「Premium」を選んだところで車両価格は220万円(※2WDの場合)。それであれば、いわゆる乗り出し価格で考えてもまずまずお安い総額で済むはず。
現在乗っているスバルXVからわざわざ乗り替えようとまでは思わないが、「これから何らかのSUVを買おうと思っている」という人で、なおかつ若干のマイナー志向を持っている人にはぜひとも注目していただきたい、なかなかのニューカマーである。
今から試乗会が楽しみだ。呼んでくれないかもしれないが。
[ライター/伊達軍曹]