コラム

質実剛健を絵に描いたようなセダン、日産クルー。一時期チューニングベースとしても注目を集めた、このクルマの魅力とは?

みなさん、こんにちは!最近のクルマは環境性能に対しての要求が高く、エクステリアのデザイン も空力を優先して流線型のものばかり。また、クーペ風のデザインが流行していることもあり、AピラーやCピラーが寝たセダンが増えてきています。
何か違う。セダンといえば3ボックスと言われるような、凸の字のデザインだったじゃないか!そんな昔ながらのセダンのデザインが好きな方に特におすすめなのが、今回紹介する日産・クルーです。タクシー専用車として開発されたものの、その独特の立ち位置が多くのマニアの心に届き、チューニングのベースカーとしても一時期注目を集めてました。
そんな日産・クルーも、販売を終えてからすでに10年以上が経ちました。今回は日産・クルーの持つ独特の個性に、改めて迫っていきたいと思います!

タクシー用として開発


出典:ウィキメディア
日産クルーは、主にタクシーとして使用することを前提に開発されました。生産は1993年から2009年にかけて行われ、約16年間フルモデルチェンジなしで生産され続けました。タクシーなど、営業車目的で開発されたクルマではありましたが、1994年から2002年までは自家用車タイプの「クルー・サルーン」も生産されています。登場から生産終了まで、一部改良こそ続けられたものの、大きなマイナーチェンジは一度も行われず、登場した当初から高い完成度を誇っていたことが伺えます。クルー自体は2代目モデルが登場することなく、1代限りで姿を消してしまいました。
クルーは、ブルーバード営業車や、ローレル営業車の後を継ぐモデルとして開発が始まりました。営業車としてのこだわりは、やはりFR、フロントエンジン・リアドライブであるという点。もちろん、FFでも技術的な問題はほとんどないのですが、タクシーやハイヤー業界からの強い要望があったと言われています。

貴重な5ナンバーのFRセダン

FRの方が、FFより回転半径が小さく、小回りがききます。マニュアルトランスミッションの場合、クラッチ板交換の際に、FFだとエンジンを下ろさなければいけませんが、FRはエンジンを載せたままで交換作業が可能。FFに比べて、FRの方がステアリングが軽く、運転時の負担が小さいです。また、坂道発信の際や、フル積載時のクラッチ操作も、FRの方がラフな操作を許容する、というメリットも。
また、信頼性・耐久性の面でも、熟成が完全に進んだFRの方がリスクが少ない、という理由もあり、クルーに昔ながらのFRが採用されたのはもはや必然と言えるでしょう。車体のサイズは全長4,595mm、全幅1,695mm、全高1,460mmと5ナンバーに収まります。クルマのスタイリングは古典的かつ一般的な3ボックススタイルで、ホイールベースは2,665mm。最近の流線型のセダンに見慣れた目にはかえって新鮮に映ります。車検証上の定員は5名です。
プラットフォームには、営業車として販売されていたローレル・4ドアセダン(C32型系)のフロントセクションと、同じく営業車のセドリック営業車(Y31型系)のリアフロアパンとキャビンを流用。その上で、さらに整備性、耐久性、信頼性を向上させたものを使用し、営業車としての完成度をさらに高めています。
参考:日産クルー買取専門ページ!

ドアの大きさが違う!


出典:ウィキメディア
コンベンショナルなクルーの中で、唯一と言っていいほど「オーソドックスから外れた装備」なのが、右前方(運転席)と左後方のドアのサイズだけ大きく取られているという点です。使用頻度の高いこれら2枚のドアを、それぞれ前後方向に50mm大きくしているため、左右でBピラーの位置が異なるという、左右非対称の独特の構造となっています。また、自家用車型の「クルー・サルーン」にも左後方の自動ドアのオプションが設定されていました。これらの点を考慮すると、小型タクシーとしての使用を前提として、それに向かってまっすぐに突き詰めた設計であることがわかります。
採用されたエンジンは、個人用のクルー・サルーンでは、「RB20E」というガソリンエンジンと、「RD28」というディーゼルエンジンの2種類。営業車ではもちろんLPGエンジンも用意されていました。ガソリン、ディーゼルともに6気筒エンジンが採用されていたのも特徴のひとつです。
RB系エンジンの頂点といえば、スカイラインGT-Rに搭載されていた「RB26DETT」が著名ですが、クルーに搭載されているRB20Eも、その流れの中にあるエンジンのひとつ。スペック的には、2リッターから130psを発生するという、取り立てて特徴あるものではないものの、回転の滑らかさや振動の少なさ、出力特性のバランスには定評のあるエンジンでした。
組み合わされるトランスミッションは、一般的な4速オートマチックと、当時でも希少になりつつあった5速マニュアルミッションの2種類が用意されました。営業車として使用することを考えると、耐久性の面で有利なマニュアルトランスミッションを設定するのは、こちらも必然だったに違いありません。

チューニングマニアにも人気?

クルー・サルーンのメインターゲットは60代以上の保守的なユーザー、とされていました。具体的には、FFよりFRを好み、4気筒エンジンより直列6気筒エンジンを好み、3ナンバーサイズよりも小回りのきく5ナンバーサイズを好み、過剰な装飾がないシンプルなセダンを好む層に向けて販売されていました。そう、クルーにはその全てが存在したのです。
実際、現代の目から見ても、ここまでシンプルなのに、必要最低限の装備が揃っていて、外観も控えめなFRの5ナンバーは希少…というより、2019年現在生産されていません。こうしたクルマが欲しい方は、中古車市場でクルーや、ライバル関係にあったトヨタ・コンフォートを探すしかないというのも、なかなかさびしい状況ですね。
5ナンバーサイズでFR、5速マニュアルトランスミッションが用意されていて、直列6気筒エンジンのRB系が載っている。当時でも珍しいこれらのスペックに注目したのは、メインターゲット層や営業車として運用するタクシー&ハイヤー法人だけではありませんでした。そう、珍しいクルマが好きなマニアや、チューニングをして楽しむチューナー層が目をつけたのです。
もともと営業車ではフェンダーミラーを使用していた個体も多かった関係で、ミラーをレトロなものに付け替えたり、ホイールキャップを交換したりすることで、古き良き時代を彷彿とさせる雰囲気を漂わせるなど、ドレスアップのベースに使用されることもありました。
また、その流れの最たるもので、光岡自動車が制作する「ガリューⅠ」のベース車両としても採用されました。こちらはいわゆるパイクカーと呼ばれるものに該当し、フロントマスクやリアについては大幅に手が加えられています。
RB系のエンジンを搭載しているということもあり、過激なチューナーによってはスカイラインGT-Rに搭載されていたRB26DETTに換装したり、軽量さを狙ってあえてシルビアなどに搭載されていた直列4気筒のSR系に載せ替えるなど、エンジンスワップのベースとして採用されることも多かったようです。また、足回りや駆動系に関しては、他車からの流用品が多かったため、既存の豊富なアフターパーツを利用できる点もチューニングマニアからは好評でした。中には、600psを超えるクルーを製作した猛者も…。

今ではかなりの希少車に…

日産・クルーは、オーソドックスなセダンとしての成り立ちが、逆に周囲から浮いて珍しく見えてしまうという、「没個性」という個性を備えた稀有なセダンでした。現在の中古車市場では5台も出回っておらず、営業車として使われていたクルマに関しては20万キロ超え、30万キロ超えという個体も…。また、販売終了からも時間が経っているので、購入時には状態の確認の他に、パーツの調達に関してもよく確認しておく必要があります。それでも、こんな「セダンの中のセダン」に、一度は乗ってみたいものですよね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
[ライター/守屋健]

https://www.car-rate.info/sedan-lab/

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ユーズトカーラボ 編集部
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