以前は「輸入中古車評論家」との看板をぶら下げて売文稼業をしていた筆者はその当時、実際に輸入車党、具体的には「ヨーロッパ車びいきな人間」であった。
しかし2017年末に現行型スバルXVの新車を購入したことをきっかけに、今やすっかり国産車党……というわけでもないのだが、まあ「国産車でも輸入車でも、どっちでもいいや!」みたいな人間に生まれ変わった。
だが告白すると今なお、心のどこかに「やっぱ輸入車(欧州車)のほうが国産車より格上だよな」みたいな意識は少しだけ残っている。
これはハードウェアとしての性能うんぬんに関する話ではない。
そこに関しては、少なくとも日本国の速度域(120km/h以下ぐらい)で常用する限りは、国産車だろうが輸入車だろうがだいたい同じようなモノだ。ドイツのアウトバーンみたいなところを走るなら話はまったく別だが、100km/hぐらいで走る分には、最近の国産車の諸性能は「かなりのモノだ!」と感嘆せざるを得ないのである。
そうではなく、わたくしは「オーラ」あるいは「世間体」みたいな部分について話している。
分譲マンションの完成予想図にはいつだって輸入車が描かれる
国産各車の(120km/h以下での)諸性能がいくら上がろうとも、世間一般では「なんだかんだいってガイシャのほうがカッコいい。ステキである」みたいな意識は根強く残っており、それはわたくし自身の心の中においても同様なのだ。
コアな国産派カーマニアは「そんなことはない! 今さらコイツは何を言ってるんだ!」とお怒りになるかもしれない。気持ちはわかる。
だが今からご自宅の郵便ポストのところへ行き、そこに投函されている分譲マンションのチラシを見てみたまえ。
そのパース(完成予想CG)に描かれている車は、いつだって「ガイシャ」じゃないか。
そこに日産ジュークとかトヨタC-HRが描かれることは絶対にない。レクサスRXでさえも、ほとんどないだろう。たいていはメルセデスかアウディかBMWの、あるいはそれらによく似た謎CG車の、ちょっとイカしてるプレミアムSUVやらステーションワゴンやらが描かれているのだ。
なぜならば、それ(輸入車)を描いたほうが分譲マンションのイメージが良化して売れやすくなり、逆に国産SUVを描いてしまうと「なんかショボい」みたいなイメージが付いてしまい、分譲マンションが売れなくなるからだ。これは良し悪しの問題ではなく、「とにかくそうなのだ」という話である。
だが輸入SUVでも「格安中古車」ではオーラが足りない
この「舶来物=カッコいい、ステキ」みたいな意識は敗戦直後の進駐軍の頃からか、あるいは明治維新前の黒船来航の頃からか、とにかく我々日本人の集合無意識にしっかり刷り込まれている何かであるため、今さらいかんともし難いのである。
ということで、今現在のわたくしはスバルXV 2.0i-Lという国産SUVに心の底から満足していると同時に、「でもやっぱガイシャでブイブイ言わせたいな」とも、少々ながら思っているのだ。
この「ブイブイ言わせる」というのも今や完全に死語ではあるのだが、昭和生まれとしては、やはり「ブイブイ言わせる」という行為への憧れは(どうしたって少しは)心のどこかにある。
それゆえ輸入車を、輸入SUVを買ってこましたいと願っている筆者ではあるが、ご存じのとおり、舶来物のSUVは非常に高額である。そしてそんな高額なSUVを買うだけのマネーは、遺憾ながら筆者は持ち合わせていない。
や、もちろん街道沿いの中古車屋販売店に行けば「激安輸入SUV」などいくらでも売っている。例えばポルシェ カイエンだって「初代の街道沿いモノ」なら車両価格60万円ぐらいだ。
だがそれでは「ブイブイ」ができない。
わたくしがやりたいのは「ガイシャのSUVでブイブイ言わすこと」であって、「ガイシャのSUVに乗ること」自体ではない。乗るだけであれば、スバルXVで十分間に合っている。
お安いのにオーラ十分なのは先代のフォルクスワーゲン パサート オールトラックではないだろうか?
ということで、どこかに「安くて、それでいてそこそこブイブイ言わせられそうな輸入SUVはないものだろうか……」などとブツブツ言いながら長考に入っていると、一台の最適な選択肢が脳裏に浮かんだ。
先代のフォルクスワーゲン パサート オールトラックである。
詳しくご存じの方も多いと思うがフォルクスワーゲン パサート オールトラックとは、フォルクスワーゲンの上級サルーンであるパサートをステーションワゴン化した「パサート ヴァリアント」をベースに、その車高をアップさせ、同時に4WDシステム「4MOTION」を組み合わせたクロスオーバー車である。
現在は2018年10月にフルモデルチェンジを受けた最新世代が新車として売られており、そちらのほうが「ブイブイ度」は圧倒的に高いのだが、そんなモノは新車だろうが中古車だろうがまだまだぜんぜん高い(中古車でもほぼ400万円以上だ)。
それゆえ、わたくしが狙いたいのは2012年6月から2015年12月まで販売された「先代パサート オールトラック」の中古車である。現行型よりブイブイ度は若干劣るが、まだまだ「あら伊達さんのお宅、なにかステキな輸入車をお買いになったのね!」と、近所のマダムから気づいてもらえるぐらいのオーラは十分ある。
それでいてその中古車は今、車両価格90万円ぐらいから狙えるのである。
まあとはいえ「車両90万円ぐらい」で買えるのは走行10万km超のけっこうボロそうな個体であるため、近所のマダムからの尊敬の念は集められないだろう。もしも買うのであれば車両150万円ぐらい、支払総額で考えるなら160万円ぐらいで、走行距離少なめの個体を狙いたいところだ。
この世代のフォルクスワーゲンというと、例の「DSG問題」が気になるところであったのだが、先般リコール手続き開始されたことにより、DSGに関する不安はほぼ解消された。
であるならば総額160万円ぐらいという、気の利いた軽自動車の新車より安いぐらいの金額でも狙えてしまう先代フォルクスワーゲン パサートオールトラックは、かなり魅力的な存在かとわたくしは思っているのだが、貴殿におかれてはいかがお考えだろうか?
SUVラボ編集部気付にてご意見を賜れたら幸いである。
[ライター/伊達軍曹]