SUVが今、ブーム!と言われ始めてから、もうどれくらいの時間が経ったでしょうか?もはやブームという状態はとっくに過ぎ去り、「セダン」や「ミニバン」といったように、完全にひとつのジャンルとして確立した感のあるSUVですが、売り上げという面では、いまだに他のジャンルに比べて大きく成功していることはたしかです。
SUVが売り上げの中心になっている、というメーカーは、ポルシェやマセラティをはじめとして非常に多いですし、その流れに乗るべく、多くのメーカーは新型SUVを毎年のように発表しています。こうしたSUVの状況は今後も変わらないのでしょうか?
この記事では、「SUVブームはこれからも続く!と断言できる6つの理由とは?」と題して、今後もSUVが売れ続けるであろう、その理由を紹介していきたいと思います。それでは、早速見ていきましょう!
いざという時の走破性
SUVは、クロスカントリータイプの4WDを祖としているクルマです。強固なラダーフレームを備え、簡素で「仕事場」といった雰囲気の内装、強力なエンジンと4WDシステムを装備するクロスカントリーはやがて乗用車化し、モノコックボディや豪華な内装を備えたSUVへと進化してきました。現在市販されているSUVの多くは、オフロードよりもオンロードの走破性、操縦性を重視して開発されていて、2輪駆動のグレードが用意されていることも珍しくありません。
とはいえ、セダンやミニバンに比べてタイヤが大きく、地上最低高が高いことは、やむを得ず悪路を走行しなければならない時や、雪や大雨などの悪天候時には大きなアドバンテージになります。日本は、世界でも特に地震や土砂災害が頻発する地域です。日常的に悪路を走るユーザーはごく少数かもしれませんが、万が一の時の移動手段として、クロスカントリーの走破性には及ばないにしても、SUVはこれからも重宝されるに違いありません。もちろん、世界的に見てもまだまだ未舗装路の割合は高く、SUVが活躍する場面は非常に多いでしょう。
高い着座位置が生む視界の良さ
SUVを初めて運転したドライバーがまず驚くのが、その視界の良さではないでしょうか。セダンやクーペなどとは比較にならない着座位置の高さが生み出す見晴らしの良さは、遠くまで楽に見渡すことができます。視界の良さは、より早く危険を察知できることにつながり、安全運転の面でも非常に有利です。もっとも、車体の後方下など、セダンなどよりも多くの死角が存在するのはたしか。後方を見守るレーダーなど、先進安全装備は予算の許す限り装備しておきたいですね。
一度この視界の良さを味わってしまうと、なかなか他のスタイルのクルマには戻りにくい、なんて声もあるほど、SUVの視界の良さには定評があります。乗り込みに関しても、本格的なクロスカントリーなどに比べると床もそれほど高くはなく、乗り降りが難しくて嫌になる、ということはありません。こうした視界の良さ、そして乗り降りの簡便さは、SUVならではの大きなメリットとして、これから先もユーザーに選ばれる理由になっていくことでしょう。
デザイン重視のユーザーを惹きつけるクーペスタイルSUV
SUV人気の理由のひとつとして、クルマそのもののデザインが「カッコいい」と認知されたことも大きいと言えるでしょう。タイヤが大きく、踏ん張るような「塊感」のあるデザインは、セダンやミニバンでは見られない独特のもの。筋肉質のアスリートを思わせるエクステリアは、男性はもちろん、女性の目にも魅力的なデザインとして映るようです。
近年は、ポルシェ・カイエンクーペやBMW・X6に代表される、クーペスタイルのSUVが続々と登場。新たなトレンドとなるか、注目を集めています。日本でもバブル経済期、スタイリッシュな4ドアクーペ風のセダンが流行しましたが、2010年代後半、再びセダンの世界にクーペスタイルの流行の波が到来。その波がSUVにもきた、とも言えるかもしれません。
どちらかというと無骨さがポイントだったSUVに、クーペの流麗さが加わったクーペスタイルのSUVは、デザインを重視するユーザーにまた新たな選択肢を提示しました。より本格的なクロスカントリー風のSUVの人気も復活してきていることから、今後のSUV市場は、より多くの選択肢の中から好みのデザインで選べるようになっていくことでしょう。
3列シートSUVの台頭
SUVの欠点のひとつが、荷物スペースはともかく、ミニバンに比べて乗車定員が少ない、ということでした。正確には、3列目のシートを備えたSUVは存在していたものの、あくまでも非常用としてしか使えないほどの広さであったり、3列目に大人が余裕を持って座れるSUVの選択肢はあまり多くはなかったり、といくつかの制約があったのです。
ところが近年、国産の3列シートSUVとしてマツダ・CX-8が登場し大ヒットを記録してから状況が一転。それまでミニバンを選んでいたユーザーが、一斉に3列シートSUVヘ乗り換えを始めたのです。日本に久しぶりに復活し、3列目にもきっちり座れる空間を確保したホンダ・CR-Vのデビューや、CX-8登場以前から「大人が座れる3列シートSUV」として孤軍奮闘していたトヨタ・ランドクルーザープラドに再びスポットが当たり販売実績が回復するなど、3列シートSUVは大きな流行の兆しを見せています。
ミニバンに乗っていたユーザーにとっても、3列目のシートにきちんと座れるのであれば、よりスタイリッシュで悪路の走行性にも優れ、もっとアクティブに週末を楽しめる3列シートSUVに乗り換えたい、と思うのは自然なことだったのでしょう。
ステーションワゴンやセダンに迫るドライバビリティと燃費
SUVの欠点とされていたのが、ドライバビリティの低さと燃費の悪さです。大きなタイヤを装備している上に、悪路走行時を考慮して地上最低高を高く設定しているSUVは、構造上どうしても重心が高くなってしまいます。コーナーリング時の姿勢変化が大きく、またハンドリングの反応性なども低いため、ワインディングなどで「思ったように向きを変えてくれない!」という場合も少なくありませんでした。
しかし、近年はサスペンション性能の向上や重心位置の改善により、セダンのみならずスポーツカーさながらのハンドリング性能をもつSUVも数多く登場。ドライバビリティの改善は猛スピードで進んでいます。中にはアルファロメオ・ステルヴィオやメルセデスAMG・GLC 63 S 4MATICのように、ニュルブルクリンクの北コースで8分を余裕で切るタイムを記録するSUVも存在するほど。
また、重い車体と強力なエンジンによる燃費の悪さも、エンジン性能とハイブリッド技術の向上により改善が進み、現在ではセダンやミニバンなどと比べても遜色ないレベルに到達。こうした環境負荷の軽減についても、SUVは積極的に改善を進めている上に、EVの登場も控えていることから見ても、これから先もSUVは自動車業界の主役であり続けるでしょう。
SUV市場の多様化はこれからも進む
SUV、と一言で言っても、現在のSUV市場は急速な勢いで多様化が進んでいます。今回の記事で取り上げた中でも、3列シートをもつSUV、クーペスタイルのSUVについて触れてきましたが、高級クロスカントリーの代名詞、メルセデスベンツ・Gクラスのフルモデルチェンジが大きな話題となったり、小型の純然たるクロスカントリー、スズキ・ジムニーが大ヒットとなるなど、硬派なクロスカントリーの再評価も、SUV市場全体を再び活性化させていると言えるでしょう。
ニュルブルクリンク北コースを8分切るタイムで走り抜けるSUVや、ランボルギーニ・ウラカンのような「スーパーSUV」、そしてあのロールス・ロイスが発表した最高級SUV・カリナンのようなモデルまで、SUVというジャンルの中に、既存の乗用車のジャンルが全て内包されてしまったかのような状況になっている昨今。個人個人の好みに合うようなSUVは、今後ますます探しやすくなっていくことでしょう。クルマを選ぶ際には、まず「SUVにしようか、それとも他のスタイルにしようか?」という風に考えるようになっていくかもしれませんね!
[ライター/守屋健]