日産が1991年から1992年にかけて2万台限定で販売したレトロカースタイルのパイクカーが日産フィガロです。一見するとオープンカーには見えませんが実は手動開閉式のオープンカー。コンパクトなボディに魅力をたくさん詰め込んだフィガロ。見た目からは想像できない装備やスペック、意外な事実までフィガロの魅力をたっぷりとお伝えします。
人々を魅了するフィガロ
ここからはフィガロの詳細について見ていきましょう。1980年代後半から1990年代前半まで日産はパイクカーシリーズをリリースしていきました。第1段は1987年リリースの「Be-1」、第2段は1989年リリースの「パオ」、そして第3段が今回紹介する1991年リリースされた「フィガロ」です。日産パイクカーシリーズのラストとなったフィガロは集大成とも言えるモデルに仕上がっています。フィガロの発表は1989年の東京モーターショー。東京モーターショーではフィガロの試作車が公開されたことでフィガロが初めて世の中にお披露目されました。1990年に日産との関係が強く自動車部品製造や特殊少量生産を請け負う高田工業にて委託生産を開始します。
フィガロが委託生産であるのには理由があり、フィガロの型式を見れば予想がつくはずです。フィガロの型式は「FK10」、つまりベースは「K10」の型式が当てられている初代マーチなのです。エクステリアやインテリアからすると初代マーチの面影は感じられませんが実は初代マーチをベースとして作られたモデルがフィガロなのです。フィガロは全長3,740mm全幅1,630mm全高1,365mmの5ナンバーに収まるコンパクトサイズ。コンセプトは「日常の中の非日常」でベースモデルを思わせないレトロなエクステリアと豪華なインテリアがフィガロの特徴です。
つるんとした曲面で構成されたボディパネル、円や半円、楕円をモチーフに描かれているエクステリアはタイムスリップしたかのような懐かしさを感じられると同時に可愛らしさがあります。ヘッドライトやリアライトなどのライト類も円形になっておりメッキモールが装飾されています。ミラーの形状までも円形をモチーフにする撤退ぶり。パステルカラーに塗られたベルトラインよりも下のボディ、ホワイトに塗られたピラーやルーフ、ボディカラーをツートーンカラーにしているのもフィガロの愛らしさを増幅しています。ホワイトに塗られたピラー部分が残りルーフ部とリアガラス部は手動により開閉することが可能。インテリアもエクステリア同様にクラシカルに仕上げられており、水平基調のダッシュボードに埋め込まれたメーターパネルはメッキモールが施されています。メーターの目盛りや針は細く繊細で懐中時計のようです。
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細いのはメーターだけではなくステアリングも細めで大径。上品でボリュームのあるソファのようなレザーシートが与えられ、まるで部屋の中にいるような落ち着いた空間が広がっています。丸型のスイッチ類やオーディオ類はシンプルにまとめられ安っぽさを感じない作りになっています。走りを支えるメカニズムは1.0L直列4気筒ターボエンジンに3速ATを組み合わせ前輪を駆動させます。このターボエンジンはピーキーな性格ではなくゆとりある走りの方向への味付けがされています。ゆったりと余裕をもって流して走る特性のエンジンとフィガロならではのデザインやキャラクターが見事にマッチしています。クラシカルで愛嬌のある親しみやすい見た目とゆとりある走りがフィガロの人気を支えているのです。
〈フィガロの評価〉
日本国内限定で新車の販売がされ2万台限定ということもあり日産は抽選での販売方式をとっていました。日産パイクカーシリーズの集大成フィガロの応募は殺到し販売前から人気のモデルでした。実際に所有したことのあるオーナーや乗ったことのある人たちの評価は高評価。エクステリアの可愛らしさ、インテリアの質感、居住スペース、ラゲッジルームなどの評価は高く日常使いでは運転のしやすさ取り回しの良さも相まって不満がないとの評価が多く見られます。2ドアのクーペスタイルですが4シーターのフィガロはリアシートの居住性も狭くて座れないほどではないとの声もあります。ボディの剛性がほど良いことと1000kgを下回る軽い車両重量、コンパクトながらゆとりある走行が楽しめるターボエンジンの組み合わせは高速道路でも問題なく走ることができます。驚きなのは見た目とは裏腹に機敏でシャープなハンドリング特性があるということ。フィガロはまさに「軽快」という言葉が表している通り、軽く、快いクラシカルオープンスポーツカーなのです。
もうひとつフィガロの驚きの事実として海外での評価が高いということ。特に日本と同じ右ハンドルの国であるイギリスでは好評でエリック・クラプトンやノエル・ギャラガーなど著名人にも愛されていました。製造販売が終了した後でもフィガロの人気は衰えず中古車市場でも高値で取引されるケースや国内外問わずフィガロ専門店があるほど人気のモデルへと成長。また人気テレビドラマ「相棒」の登場人物である杉下右京の愛車として登場したこともあります。フィガロは日本国内に留まらず海外にもファンが多く根強い人気を誇り、著名人に愛用されたり人気テレビ番組に登場するなど製造が終了した後でも愛され続ける名車となりました。
フィガロが欲しい!
限られた台数だけが生産されたフィガロ。海外にも愛用者がいるということは日本に残っている車両が少なくなってきているということです。そんなフィガロですが、2019年3月時点では50台程度の車両が日本国内の中古車情報には掲載されています。一般的な中古車両本体価格は30万円~300万円ほどで取引されています。生産終了から25年以上が経過し、まもなく30年を迎えようとしているのにも関わらずこれほどの価格がついているのです。それほど人気が高く人気が衰えない証拠でもあります。幅広い価格帯の中でオススメのフィガロはメカニズム(エンジンやトランスミッションなど)の調子が良く修復歴がない個体がオススメです。オープンカーであるフィガロの弱点のひとつが開閉するルーフ。ソフトトップであるため経年劣化や幌の切れ、水漏れがないかどうかは要チェックです。流通している中古車の中には幌を張り替えた個体も存在しているようです。フィガロを選ぶときにはルーフの状態は必ずチェックするようにしてください。
〈オススメまとめ〉
・エンジンやトランスミッションなどの機械の調子
・修復歴無し
・ソフトトップルーフの状態
時を越えて愛されるレトロオープンカー
日産のパイクカーシリーズ第3段として登場したフィガロ。レトロなデザインと見た目からは想像できないゆとりのある上質な走りが特徴です。日本国内のみでの販売でしたがフィガロは日本を飛び出し海外にも流通するようになりました。日本国内での人気はもちろんのこと海外でも人気が高いフィガロは30年を迎えようとする今でも多くのファンと根強い人気に支えられ大切にされ続けています。
フィガロ登場当初はデザインの流行に逆らったクラシカルなデザインとして話題になりましたがフィガロの可愛らしく親しみやすいデザインはフィガロ登場から30年が経過しようとしている現在でも古さを感じることはありません。Simple Is Bestを具現化したデザインや細部まで徹底した作り込みは時を越えて愛され色褪せない魅力を秘めています。今後、フィガロの個体数は減少する一方です。フィガロに乗りたいのであれば今がラストチャンスといえるでしょう。今でも独特な魅力を放ち続けるフィガロ。今後もファンやオーナーに支えられながら、クルマ好きのみならず子供から大人まで多くの人々を魅了し続けてくれることでしょう。
[ライター/齊藤 優太]